〔編集部から〕気鋭のドクターが独自の視点で論考を展開する人気連載「ドクターズアイ」の執筆陣に、今月から新たに旭川医科大学救急医学講座准教授/旭川医科大学病院救命救急センター副センター長の丹保亜希仁氏が加わりました。救急医療を中心に、話題の最新論文を日常臨床の立場で徹底解説していただきます。 研究の背景:一般的な検査項目などから簡便・迅速に算出できるSOFAスコア 1996年に"Sepsis-related"Organ Failure Assessmentとして公表されたSOFAスコアは、臓器障害を評価・モニタリングする指標である。呼吸・凝固・肝臓・心血管・中枢神経系・腎臓の6臓器における障害の程度を5段階(0~4点)で総合的に評価する(Intensive Care Med 1996; 22: 707-710、表1)。 表1.SOFAスコア ※動脈血酸素分圧(PaO2)/吸入気酸素分画(FiO2) (Intensive Care Med 1996; 22: 707-710) その後、敗血症に特異的な指標ではなく成人重症患者に広く適用できることが示され、1998年の多施設研究では"Sequential"Organ Failure Assessmentと記載された(Crit Care Med 1998; 26: 1793-1800)。SOFAスコアは、一般的な検査項目などから簡便・迅速に算出でき、経時推移や臓器別の評価も可能な点が特徴であり、現在に至るまで臨床と研究の双方で広く用いられている。 一方、集中治療は当時と比べて大きく進歩している。高流量鼻カニュラ(high-flow nasal cannula;HFNC)や非侵襲的陽圧換気(noninvasive ventilation;NIV)、体外式膜型人工肺(extracorporeal membrane oxygenation;ECMO)、鎮静下でのGCS評価など、従来のSOFA(以下、SOFA-1)スコアでは定義や点数が曖昧となりうる状況が増えている。このような歴史的・臨床的背景を踏まえ、JAMA Netw Openに発表された論文(2025; 8: e2545040)は、現在の集中治療に適合するアップデート版SOFA(以下、SOFA-2)スコア開発の背景と方法論について述べたものである。