〔編集部から〕本連載は、主要医学ジャーナルに目を通すことを毎朝の日課としている医学レポーターが、SNS上での反響も踏まえ、毎週特に目を引いた論文5本をピックアップ。うち1本にフォーカスします。12月1~6日の1週間に公開された論文からフォーカスしたのは「診療ガイドライン」に関する論文。その他のピックアップ論文は、末尾をご覧ください。 「経済性」「易実行性」も推奨の判断指標に 現在の診療ガイドラインは「推奨」採用の適否を判断する指標として、「推奨の強さ(クラス)」と「エビデンスのレベル」の2つを提示するのが一般的だ。 これに加えて欧州心臓病学会(ESC)では、「経済性」と「易実行性」も判断指標として提示しようという動きが始まった。 背景にあるのは「治療に優先度をつける必要性」である。 このような必要性が高くなる典型例は、経済的に豊かでない国や、保険償還に当たり十分な医療技術評価(HTA)が実施されていない国である。しかし最近では「相対的に豊かな国」でも、医療コストの膨張により「優先度考慮」の必要性が高まっているという。 そのような認識に基づきESC臨床ガイドライン委員会は、「2021年心不全診療ガイドライン(23年部分改訂)」を素材に新たな推奨の試案を作成。12月3日、Eur Heart J Qual Care Clin Outcomesで公表した。著者はベルギー・Jessa HospitalのPhilippe Jr Timmermans氏ら。 試案では、どの治療を優先すべきかが一目で分かるよう複数の工夫が凝らされている。従来のガイドラインとは明らかに一線を画するといえよう。 「診療ガイドライン2.0」、あるいは「シン・診療ガイドライン」の時代は訪れるだろうか。