私の一押し記事

多発性骨髄腫の治療が進展

多様な選択肢

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ
編集部・植松玲奈の一押し記事
くすぶり型多発性骨髄腫へのダラ単剤は日本人にも有効
2025年10月20日掲載
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 今年(2025年)は、多発性骨髄腫(MM)治療の話題に事欠かない年となった。新規作用機序の薬剤として、抗体薬物複合体(ADC)ベランタマブ マホドチンやG蛋白質共役型受容体ファミリーCグループ5メンバーD(GPRC5D)/CD3二重特異性抗体トアルクエタマブが再発/難治性(RR)MMに対してそれぞれ5月、6月に承認された。

 また適応拡大として移植非適応の未治療MMに対する抗CD38抗体イサツキシマブとボルテゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン(VRd)を併用するIsaVRd療法が2月に承認。加えて、抗CD38抗体ダラツムマブ+VRdを併用するDVRd療法が移植の適応・非適応にかかわらず、未治療MMに対して6月に添付文書改訂が行われた。

無症候性の段階から介入しリスクを低減

 こうした中、MMの無症候性前駆症状であるくすぶり型MM(SMM)に対するダラツムマブ単剤療法が今年11月に一変承認を取得した。

 本紹介記事は、承認の根拠となった第Ⅲ相AQUILA試験の日本人サブグループ解析について第87回日本血液学会(10月10~12日)で発表された内容である。解析の結果、MMへの進行または死亡のリスクは75%低下、全奏効(ORR)は観察群の7.7%に対してダラツムマブ群で86.7%と良好な結果が得られた。新たな安全性上の懸念は見られなかった。

 無症候性の段階からの介入の妥当性についてはさまざまな議論があり、記事の中でも発表者の鈴木憲史氏〔日本赤十字社医療センター(東京都)骨髄腫アミロイドーシスセンター顧問〕は、年齢層(期待余命)に基づく選択の可能性について指摘。さらに「高リスクSMMの定義に関する議論を深めることで、至適な患者像が特定できる可能性」があるとしている。

血液がん研究の積み重ね余命に大きく影響

 いずれにしても、MMの治療戦略は大きく変化しており「初期の段階から有効性の高い治療薬(併用療法)で介入し、再発させない」「再発しても、複数の選択肢がある時代となった。また、MMは治療の進展とともに予後が改善しており、長く付き合う疾患となっている。

 実際、DVRd療法の有効性、安全性を検証したPERUSEUS試験では、移植適応例に対する最良適合推定無増悪生存(PFS)が17.1年と大幅な延長が示された(関連記事「ダラツムマブ4剤併用、推定PFSは17.1年」)。生存期間中央値が2~3年だった時代を思うと隔世の感がある。

 治療の選択肢が格段に増え、根治を目指す時代だからこそ、あらためて信頼性の高い情報を提供する重要性を認識し、丁寧に取材に臨みたい。

(編集部・植松玲奈)

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