私の一押し記事

ここまで来たか、ロボット犬

パートナーとしてどう付き合う?

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ
編集部・陶山慎晃の一押し記事
犬 vs.ロボット犬、自閉症/ダウン症児への効果は
2025年4月23日掲載
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 犬が人間と共生するようになって久しく、縄文時代から飼われていたとの説もある。また犬に限らず、猫や鳥、魚など、さまざまなペットと人は生活をともにしている。

 こうした状況下、動物と暮らすことが人間の健康にどのような影響を及ぼすかを検討する研究が盛んに行われてきており、Medical Tribuneウェブでもその成果を多数取り上げてきた(関連記事「幼少期の犬・猫飼育で子宮内膜症のリスク増」「犬を飼うことと全死亡リスクの低下が関連」)。

 しかし近年では、生きた動物だけでなく、ロボット犬などのペットロボットも各家庭に浸透しつつある。動物アレルギーの子供や高齢者にとって、健康リスクや肉体的負担が生じにくいことが普及の一因となっているのだろう。最近は、本物の動物とそれを模したロボットで、さまざまな疾患への有効性を比較する検討もなされている(関連記事「ペット型ロボットが長期入院患者の癒しに」)。

 1999年にペットロボットのaiboが登場し話題となってから、四半世紀。今やペットロボットは、医学研究にまで利用される時代になったのだ。私を含め、多くの愛犬家にとって気になる話題だったのではないだろうか。

リアル犬と遜色ない評価も

 今回取り上げた論文では、自閉症スペクトラム障害(以下、自閉症)やダウン症の小児を対象に、犬介在療法が社会的スキルに及ぼす影響について、犬型ロボットを用いた介在療法や無治療の対照群と比較するランダム化比較試験を実施した。

 試験の詳細は元記事を読んでいただくとして、結果的にロボット犬介在療法群および対照群と比べ、犬介在療法群では情動共鳴(emotional attunement)の尺度や情動調整の改善が見られたが、社会的自信、会話の共鳴、社会的認知および社会的動機付けに3群で有意差はなかったことなどが示された。

 加えて、個々の児への介入効果を示す信頼性変化指数(RCI)を見ると、高値は主に犬介在療法群が占めたものの、情動の共鳴と社会的動機付けの尺度は、ロボット犬介在療法群でも高値例が存在し、犬介在療法群で低値例も見られた

進歩を続けるロボット、動物は?

 この試験を実施した研究者は「アレルギーや犬恐怖症、犬の支援が不可能な環境にある子供にとって、有望な代替手段になりうる」とコメントしている。

 現状、自閉症児やダウン症児に対する影響に関して、総合的にはリアル犬の方がロボット犬より良好そうであるものの、ロボット犬の有用性が否定されたわけではないといった、玉虫色の結論が出された。

 だが今後も、人工知能(AI)を登載したペットロボットの進歩は止まらないだろう。5年後、10年後に同様の試験を実施した場合、その結果はどうなるか。

 将来、人間の仕事の多くがAIに取って代わられるといわれるが、リアル犬の存在意義はどうなっていくのだろうか。リアル犬派の自分にとって、この手の研究には複雑な心境を抱くが、さまざまな事情で生身のペットと触れ合えない人びとがいるのも事実。動物であっても機械であっても、パートナーとして適切に付き合いたいものである。

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