2025年3大ニュース&2026年医学はこうなる

【2026年医学はこうなる】大磯義一郎

日本医療安全学会理事長/浜松医科大学教授

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【私が選んだ医学2025年の3大ニュース】

1. 限界を突破した医療費削減政策~ギャンブル依存からの脱出~

 2024年の3大ニュースでも書いたが、1983年に打ち出された「医療費亡国論」以降、40年以上にわたり一貫して医療費が削減され続けた結果、医療現場は荒廃した(関連記事:【2024年医学はこうなる】大磯義一郎)。必要な医薬品がないことはもはや日常化し、医療機器は耐用年数を過ぎても更新できず、そのような現場を見た若手医師は「直美」に流れた。行政、政府の失政により、もはや安全な医療が提供できる状況ではなくなった(関連記事:「現場は限界!政府・国会で進む「医療費削減」論(5月の医療ニュース解説)」)。

 社会保障費を確保するために経済発展が重要だという主張には一理ある。しかしバブル崩壊以降、あらゆる政府主導の経済対策は功を奏しておらず、結果として莫大な税金がドブに捨てられ続けている。この35年で明確になったのは、政府主導の経済対策では、かつての自動車、白物家電のような安定した輸出産業を創出することはできないということだ。政府は「今度こそ勝つ」といってギャンブル(経済対策)につぎ込み、子供の給食費(社会保障費)が払えないというギャンブル依存家庭のような状況に陥っていることを自覚すべきである。

 一方、2025年に議論された高額療養費制度とOTC類似薬については、ともに患者会の強い反対を受け、修正されようとしている(関連記事:「どうなる!? 高額療養費の上限引き上げ(1月の医療ニュース解説)」)。

 医療費をめぐっては、常に「金に汚い医師」といった誹謗中傷をテコに、削減こそが国民の利益であるかのようなデマが繰り返されてきた。しかし、社会保障費の削減はすなわち国民への保険給付の削減に他ならず、保険契約の不利益変更と同義である。この点を見える化すること、そして本当の意味で患者が医療に参加することが、公正な議論をするために重要と考える。

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