週刊論文ウォッチ

「利益相反なし」は信用できるのか?

注目される「非金銭的COI」、日本の「自己申告COI」には抜け穴

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

〔編集部から〕本連載は、主要医学ジャーナルに目を通すことを毎朝の日課としている医学レポーターが、SNS上での反響も踏まえ、毎週特に目を引いた論文5本をピックアップ。うち1本にフォーカスします。12月14~20日の1週間に公開された論文からフォーカスしたのは「利益相反」に関する論文。その他のピックアップ論文は、末尾をご覧ください。

経済的利益供与を伴わない「非金銭的COI」

 今日「利益相反」(COI)の開示は医学研究の成果報告、あるいはガイドライン作成などにおいて必須である。

 ただし、COIがどこまで正確に開示されているか、その点は不明だ。

 2018年のデータだが、米国で「売り上げトップ10の薬剤」を推奨していた診療ガイドライン18本の著者160人を調べたところ、それら薬剤を製造する会社からの資金提供「なし」とガイドラインに報告していた著者の37%が、実際には資金提供を受けていた(JAMA Intern Med 2018; 178: 1712-1715)。

 これは「金銭的」COIの1例だが、近年では、このような経済的利益供与を伴わない「非金銭的COI」にも、注目が集まっている。

 経済的利益の供与を介さなくても、研究成果やガイドライン推奨に影響を及ぼしうる、「非金銭的COI」の実態が明らかになってきたのだ。俗っぽく呼ぶなら「隠れCOI」だろうか。

 そして12月18日、JAMA Oncolに「がん研究における非金銭的COI管理―実践ガイド」と称する論説が掲載された。著者はオーストラリア・St Vincent's HospitalのAnnabelle D Robinson氏ら。

 「非金銭的COI」にはどのような様態があり、どのように開示・管理すべきなのか―。まだ解決すべき課題は多いようだ。

宇津 貴史(うつ たかし)

医学系編集会社、広告代理店(編集職)とメディカルトリビューン(記者)を経て、2001年からフリーランス。新聞系メディアなどに記名、匿名で執筆を続ける。平日は原則として毎朝、最新論文をチェック(https://x.com/Office_j)。特定非営利活動法人・臨床研究適正評価教育機構(J-CLEAR)会員。会員向けニュースレター記事執筆、セミナーにおける発表などを担当。日本医学ジャーナリスト協会会員。共著に『あなたの知らない研究グレーの世界』(中外医学社)。

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