ドクターズアイ 菅野義彦(腎臓内科)

医師はいくつの「予後改善薬」を投与するのか

Fantastic infinityの危惧

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研究の背景:SGLT2阻害薬が予後を改善する条件をメタ解析で検討

 毎年10月末から11月にかけて腎臓領域最大のイベントである米国腎臓学会(American Society of Nephrology;ASN)主催のKidney Weekが開催される。いつからか記憶にないが近年、New England Journal of Medicine誌が同学会とタイアップしたようで、この時期には腎臓関連の大きな研究が同誌にまとめて掲載される。当然、同学会も大幅に時間を確保して発表する場を第一会場に設けるので、そこに足を運べば腎臓領域の現在のトピックを感じることができる。昨年(2025年)の同誌では、免疫抑制薬がようやく回ってきた「IgA腎症」の知見に関するものがメインであったが、JAMA誌では今をときめくSGLT2阻害薬を大きく取り上げた。

 2016年に糖尿病患者を対象とした研究によってSGLT2阻害薬が腎機能低下を抑制することが示され、慢性腎臓病(CKD)の治療を変えた。そのSGLT2阻害薬だが、これまでは「糖尿病患者では」や「蛋白尿があれば」とか「腎機能が保たれている症例では」というなんらかの投与条件が付いていた。この条件をメタ解析の力で一気に取っ払うことはできないか、というのが今回紹介する研究の背景である。

Neuen BL, Fletcher RA, Anker SD, et al. SGLT2 Inhibitors and Kidney Outcomes by Glomerular Filtration Rate and Albuminuria: A Meta-Analysis. JAMA 2025; 7: e2520834

 責任著者のBrendon L. Neuen氏は、オーストラリアのジェームスクック大学を2013年に卒業後、腎臓内科医・疫学者として考えうる限りのエリートコースを驀進する研究者である。彼が事務局長を務めるSGLT2 Inhibitor Meta-Analysis Cardio-Renal Trialists Consortium(SMART-C)は、9万例以上が参加した13件の大規模臨床試験のメタ解析を企画した研究ユニットである。さてSGLT2阻害薬は、どのようなプロフィールのCKD患者に効果を発揮するのであろうか。

菅野 義彦(かんの よしひこ)

東京医科大学腎臓内科学分野主任教授

1991年慶應義塾大学医学部卒業。同大学院進学後、米国ジョージワシントン大学、国立衛生研究所に留学。埼玉医科大学腎臓内科、医学教育センター、慶應義塾大学医学部血液浄化・透析センターを経て2013年より現職。2018年より大学病院副院長(医療安全・危機管理)、2024年より大学副学長補佐を務める傍ら2021年システムデザインマネジメント学修士、2025年教育学修士を取得。腎臓・高血圧・透析領域のみならず感染症、老年医学、医学教育などの専門資格を有する。また臨床栄養学に関するオピニオンリーダーの1人でもあり、日本臨床栄養学会、日本病態栄養学会の理事を務める。

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