ドクターズアイ 坪倉正治(公衆衛生)

災害関連死をどう減らすか?

「法的」「医学的」災害関連死についての誤解

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 近年の災害において、「災害関連死」という言葉を耳にしたことがない人はいないのではないだろうか?

 2024年1月に起きた令和7年能登半島地震では災害発生から数日後には、既に「災害関連死が〇名発生しました」と報道されていた。

 しかし、ここには大きな誤解がある。「災害関連死」とは本来法的な用語で、災害弔慰金の支給対象になることと同義である。災害弔慰金の支給対象となるには、災害の後に亡くなった方の遺族が市町村に災害弔慰金の申請を行い、その後市町村で実施される災害弔慰金等支給審査委員会が「災害と関連がある死亡」と認定する必要がある。災害直後の混乱した状況で審査委員会が開催されることは考えられないため、報道されていた「災害関連死」という言葉は、おそらく医学的な意味で「災害による間接死」を指したものであろう。  

 上述したように、法的用語としての「災害関連死」は、「災害弔慰金の支給等に関する法律(昭和48年法律第82号)」に基づき明確に定義されている。一方、医学的な意味での「災害関連死」には明確な定義がなく、これまでに研究も少ない。

 医学的な意味での「災害関連死」は、「災害による間接死」と同等の意味で使われることが多く、「災害関連死」と「災害による間接死」は混同されてきた。「災害による間接死」を集積したデータベースはなく、「災害関連死」に関するデータは「災害による間接死」のデータをある程度カバーすることから貴重であるといえよう。

 今回の論考では、東日本大震災・東京電力福島第一原子力発電所事故で大きな被害を受けた福島県南相馬市の災害関連死の全例調査の一連の結果について解説したい。南相馬市は福島県の海沿いの浜通りにあり、原発からは18~38kmに位置し、地震・津波の被害はもちろんあったものの、原発事故により原発の半径20km圏内が警戒区域に、さらに20~30km圏内が緊急時避難準備区域及び計画的避難区域に指定され、放射線災害の影響も色濃く受けた。〔Ann ICRP 2024; 53(1 suppl): 196-202BMJ Open 2024; 14: e084009Int J Disaster Risk Reduct 2023; 96: 103989Sci Rep 2024; 14: 2946Front Public Health 2024; 12: 1394376Front Public Health 2024; 11: 1292776Front Disaster Emerg Med 2024; 2: 1434375ASEAN Journal of Disaster Health Management 2025; 1: 184-197

【監修】坪倉 正治(つぼくら まさはる)

福島県立医科大学放射線健康管理学講座主任教授

内科認定医 血液内科専門医・指導医 医学博士

平成18年3月 東京大学医学部卒、平成18年4月 医療法人鉄蕉会亀田総合病院 研修医、平成20年4月 帝京大学ちば総合医療センター第三内科(血液) 助手、平成22年4月 都立駒込病院血液内科 医員、平成23年4月 東京大学大学院医学系研究課 博士課程 (〜平成27年3月)、東京大学医科学研究所 研究員(〜平成28年3月)、平成23年5月 南相馬市立総合病院非常勤医として勤務開始、平成24年3月 相馬中央病院・ひらた中央病院非常勤医として勤務開始、平成27年10月 相馬中央病院内科 医員、平成29年10月 相馬中央病院 特任副院長、平成30年4月 公立大学法人福島県立医科大学公衆衛生学講座 特任教授、平成30年7月 南相馬市立総合病院 地域医療研究センター長、令和2年6月 現職

南相馬市放射線健康対策委員会 委員、相馬市健康対策専門部会 委員、川内村への帰村に向けた検証委員会 委員、飯舘村健康・リスクコミュニケーション推進委員会 委員

【執筆】澤野 豊明(さわの とよあき)

常磐病院 消化器外科医

千葉大学医学部医学科卒。福島県立医科大学医学部大学院博士課程卒。消化器外科医。2014年より南相馬市立総合病院での初期研修医を経て、現在はいわき市の常磐病院で消化器外科医として勤務。福島第一原発事故後の被災地で除染作業員や災害関連死の研究活動に従事している。

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