研究の背景:ACTの意思決定を難しくする「見えない不均一性」 結腸がんにおける術後補助化学療法(ACT)は、病理学的Stageを主軸に意思決定がなされる。しかし同じStageでも再発リスクは均一ではなく、過治療/過小治療は避けられない。現在、術後の微小残存病変(molecular residual disease;MRD)の「現在地」を映すツールとして循環腫瘍DNA(circulating tumor DNA;ctDNA)が期待されており、術後ctDNAによる評価でMRD陽性では治療を強化(または追加介入)し、MRD陰性では補助化学療法を省略または軽量化するというリスク適応型の臨床試験デザインが多数検証されている。代表例としては、StageⅡ結腸がんにおけるctDNAガイド管理を検証したランダム化比較試験DYNAMICがある。同試験ではctDNA陰性例で補助化学療法を省略しても再発無増悪生存を損なわないことが示された(N Engl J Med 2022; 386: 2261-2272)。日本でもCIRCULATE-JapanプロジェクトのVEGA試験(ctDNA陰性例を対象とするde-escalation)およびALTAIR試験(ctDNA陽性例を対象とするescalation)においてMRDに基づく治療最適化が検証されている(Cancer Sci 2021; 112: 2915-2920)。 既存アッセイによるctDNA評価が期待を集めている理由は、再発例を特異度高く拾える点にある。しかしこれらの方法には、特に手術直後のctDNAが最も少ないタイミングでは感度が十分でなく、ACTの要否を判断する局面での決定打に欠けるという課題もある。加えて、ACT施行後もctDNA陽性のまま推移し、標準ACTがMRD消失に結び付かない症例が一定数見られることも無視できない。 そこで今回は、術後早期MRDの捉えにくさという課題に対し、感度向上、再発機序の解明および分子マッチ治療の可能性について検証したJorge Martín-Arana氏らの論文を紹介したい。(Nat Cancer 2025; 6: 1000-1016)