ドクターズアイ 大前憲史(泌尿器)

ED治療薬、3剤比較研究の妥当性は?

オンライン診療データ活用の意義と疑義

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研究の背景:GL刷新も第一選択はPDE5阻害薬

 2023年の全国調査によると、日本の勃起障害(ED)患者数は25年前よりさらに増加し、今や約1,400万人に上ると推計される(World J Mens Health 2025; 43: 239-248)。20歳代でも少なくない男性がEDを有し、少子化の進む日本では男性不妊症の原因としてもEDの重要性が増している。そのような背景の下、長らく日本のED治療の指針となってきた『ED診療ガイドライン(GL)』(以下、旧版GL)が昨年(2025年)、名も新たに『2025年版男性性機能障害診療GL』(以下、新版GL)として大幅に刷新された。以前、Medical Tribuneウェブで小堀善友氏が執筆された「新たに推奨されたED治療とは?」の中で、旧版GLの治療指針が紹介されており、そちらと比較いただくとよく分かるが、新版GLでは低強度体外衝撃波療法(Li-ESWT)やテストステロン補充療法が第二選択の治療として新たに追加されている(図1)。

図1.日本性機能学会/日本泌尿器学会『2025年版男性性機能障害診療ガイドライン』の治療指針

(編集部作成)

 一方で、ED治療の第一選択は依然、ホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害薬であり、そこは旧版GLと変わりがない。現在、日本ではシルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィルの3剤が使用可能となっており、3剤ともジェネリック製剤が存在する。これらには有効性や作用発現など、臨床的に異なる特徴があるが、その使い分けについてはGLでは明確にされておらず、現状、患者のニーズに応じ医師が個々で判断し処方している。各薬剤の有効性や安全性に関する既存のエビデンスについては2021年に報告されたレビュー論文(Front Pharmacol 2021; 12: 735708)によくまとめられている。ただ、プラセボと比較した場合の各薬剤の有効性や安全性は十分に確立されているものの、実は薬剤を直接比較して得られたエビデンスは乏しいことが分かる。

 こうした中、オンライン診療プラットフォームで得られたデータに基づき、薬剤の直接比較を試みたリアルワールドデータ研究の結果が報告されたので紹介したい(Eur Urol Focus 2025年11月18日オンライン版)。

大前 憲史(おおまえ けんじ)

福島県立医科大学病院臨床研究教育推進部副部長・特任准教授

2003年、名古屋大学医学部卒業。臨床研修後10年間、がん手術を中心に泌尿器科医として研鑽を積む。東京女子医科大学泌尿器科(助教)、京都大学大学院医療疫学分野(博士後期課程)、福島県立医科大学臨床研究イノベーションセンター(研究フェロー)などを経て、2020年より現職。専門は泌尿器科学×臨床疫学。臨床業務に携わりながら、臨床研究における方法論的な観点から研究や教育活動に従事。社会健康医学博士、日本泌尿器科学会専門医・指導医、社会医学系専門医、日本臨床疫学会上席専門家、日本老年泌尿器科学会評議員の他、学会機関誌の編集委員も務める。良質なエビデンスをいかに効率的かつ効果的にユーザーに届けられるかが近年の関心事。著書に『医学論文査読のお作法 査読を制する者は論文を制する』(健康医療評価研究機構)などがある。

大前 憲史
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