研究の背景:否定論者の根拠は「因果の逆転」を含む観察研究のネガティブデータ これまでに、Doctor's Eyeで何度か人工甘味料のことを取り上げてきた。 具体的には、1回目(2014年10月7日、関連記事「NHKも報道,『人工甘味料が血糖を悪化させる』の信頼性は?」)では、動物実験で人工甘味料サッカリンが血糖管理を悪化させたという論文(Nature 2014; 514: 181-186)を取り上げて、抗生物質で治せるような糖尿病は人間世界には存在していないことをご紹介し、2回目(2021年3月19日、「人工甘味料を闇雲に恐れる必要はない!」)では同じ実験を他のグループが追試したところ全く同じ現象が生じなかった(Microbiome 2021; 9:11)ので、2014年のNature論文のサッカリンにはコンタミネーションが疑われているとことをご紹介した。 2025年にも人工甘味料アスパルテームがマウスとサルにおいてインスリン分泌を起こし、低血糖を頻発させて動脈硬化症を惹起するという「驚愕」の論文が一流誌Cell Metabolismに掲載されている(Cell Metab 2025; 37: 1075-1088.e7)。人間ではアスパルテームによる低血糖の発生は否定的であるので(Am J Clin Nutr 1989; 49: 427-432, Br J Nutr 2011; 105: 1320-1328, J Nutr 2018; 148: 1293-1299)ので、どうしてこんな「それがどうした」レベルの論文が一流誌に載ったのかという意味での「驚愕」である。 基本的に、人工甘味料摂取でのネガティブな現象を報告する論文は、観察研究においては多数あるものの、それらは因果の逆転を否定できない(太っている人や血糖値の高い人が人工甘味料を摂取し、健常な人は砂糖を摂取しているので、人工甘味料を摂取することが肥満や高血糖に伴ってなんらかのネガティブなアウトカムと関連する)。一方、ランダム化比較試験(RCT)での因果関係の検証ではそうしたネガティブなアウトカムは示されず、逆にポジティブなアウトカムが示されることが多いと私は考えている。 しかし、それでも観察研究でのネガティブなデータを基にして、「長期的にリスクがある可能性を否定できないから」という理由で、人工甘味料(入りのドリンク)を摂取することを否定したがる医療従事者や組織は後を絶たない(さかえ 2023年10月号p49-51、Diabetes Metab J 2026; 50: 32-46)。 このたび、人工甘味料入りドリンク(ASB;artificial sweetened beverage)の常用習慣がある2型糖尿病患者を対象にして、そのままASBを飲む群と水に変更する群にランダムに割り付けたところ、HbA1cについても体重についてもASB群の方が良い成績であったという24週間の介入試験の結果が米国糖尿病学会の機関誌に掲載された(Diabetes Care 2026; 49: 239-246)。積極的に人工甘味料摂取を糖尿病患者に勧めている医師の1人として、多くの方にこの結果をお伝えしたい。