第9回:患者に余命を伝えるべきか

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

 あなたは40歳代の男性がん患者Aさんの治療を担当していた。最初の化学療法が効果を示さなくなり、残る治療選択肢は限られてきていた。

 ある日の診察で、Aさんは尋ねた。

Aさん:自分には、あとどのぐらい時間が残されているのですか...?

 あなたは一瞬真実を伝えるべきか迷った。しかし、彼の毅然とした態度から、直感的に伝えた方がよいと感じた。そして、こう答えた。

あなた:個人差があるのではっきりしたことは言えないが、来年の桜は見られないと思う

 Aさんは静かに涙ぐんだ。

Aさん:教えていただきありがとうございます。

 そう言った後、Aさんは頭を下げた。

清水 研(しみず けん)

がん研究会有明病院 腫瘍精神科 部長

1971年生まれ。精神科医・医学博士。金沢大学卒業後、都立荏原病院(現・東京都保健医療公社荏原病院)での内科研修、国立精神・神経センター(現・国立精神・神経医療研究センター)、都立豊島病院(現・東京都保健医療公社豊島病院)での一般精神科研修を経て、2003年、国立がんセンター(現・国立がん研究センター)東病院精神腫瘍科レジデント。以降、一貫してがん患者および家族の診療・ケアを担当している。2006年、同センター中央病院精神腫瘍科勤務。同科科長を経て、2020年4月より現職。日本総合病院精神医学会専門医・指導医。日本精神神経学会専門医・指導医。日本サイコオンコロジー学会登録精神腫瘍医。近著に『がんで不安なあなたに読んでほしい。 自分らしく生きるためのQ&A』(ビジネス社)、『もしも一年後、この世にいないとしたら。』(文響社)。

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