亀田総合病院 東洋医学診療科南澤 潔 氏 「五臓」とは東洋医学的な仮想の機能単位で、肝(かん)、心(しん)、脾(ひ)、肺(はい)、腎(じん)の5つを指します。 『傷寒論』が書かれた2000年ほど前の中国では、五行説という思想が強い影響力を有しており、医学の世界にもその世界観が導入されたものと思われます。五行説は、世の中は木(もく)、火(か)、土(ど)、金(ごん)、水(すい)の5要素から成り立ち、お互いに関連し合っていてそれらの調和が大切という考えで、今でも「易」(占い)にその面影を残しています。「五臓」を「五行説」に当てはめると「肝」が「木」、「心」が「火」、「脾」が「土」、「肺」が「金」、「腎」が「水」にそれぞれ対応します。 肝、心、肺、腎は比較的現在の臓器と相違が少ないのですが、脾は大きく異なっており誤解と混乱の元になりがちです。前述したように、消化機能をつかさどる消化液の分泌臓器も含めたいわゆる「胃腸」を指すと理解すればよいでしょう。 五臓には「相生相剋」という相互関係があります。肝と脾には「木剋土(もっこくど) 」といって、「肝」の属する木火土金水「木」のグループは、「脾」の属する「土」のグループを弱めるという関係にあります。肝の異常は脾の機能を弱めるというわけで、怒りなどで肝が亢ぶると食欲が低下する理屈です。 ◆執筆者◆ 南澤 潔 氏 医学博士日本東洋医学会 漢方専門医・指導医日本内科学会 総合内科専門医・指導医日本救急医学会 救急科専門医 【ご略歴】1991年 東北大学医学部 卒業1991年 武蔵野赤十字病院 研修医1993年 富山医科薬科大学(現 富山大学)和漢診療科1995年 諏訪中央病院 内科1996年 成田赤十字病院 内科1999年 麻生飯塚病院 漢方診療科2001年 富山大学 和漢診療科2006年 砺波総合病院 東洋医学科 部長2009年 亀田総合病院 東洋医学診療科 部長