「第3の痛み」痛覚変調性疼痛の治療戦略 痛覚変調性疼痛(nociplastic pain)は、侵害受容性疼痛および神経障害性疼痛に続く"第3の痛み"分類として、国際疼痛学会が提唱した概念であり、日本語訳は日本痛み関連学会連合用語委員会(2021)によって定義された。神戸学院大学総合リハビリテーション学部において松原貴子教授とともに疼痛研究に取り組む服部貴文氏は第54回日本慢性疼痛学会(2月22~23日)で、所属研究室の自験例をもとに痛覚変調性疼痛の病態と臨床症候および治療戦略について解説した。・・・ 運動誘発性鎮痛の作用機序と臨床応用 運動による疼痛緩和作用は運動誘発性鎮痛(exercise-induced hypoalgesia;EIH)と呼ばれ、15分以上の運動後に主観的疼痛強度や痛覚感受性が全身性に減弱するとともに、 "runner's high"現象として知られる高揚感を伴う気分改善も生じることが知られている。神戸学院大学総合リハビリテーション学部教授の松原貴子氏の下、同学部の服部貴文氏とともに理学療法士として研鑽を積む同学部の大賀智史氏は、第54回日本慢性疼痛学会(2月22~23日)で、EIHの作用機序と、運動を構成する要素(脳運動野、骨格筋、関節)の役割、さらにその臨床応用について解説した。・・・ 脳の知覚回路から考える痛覚変調性疼痛 慢性疼痛は、神経障害性疼痛、侵害受容性疼痛、痛覚変調性疼痛に分類され、このうち痛覚変調性疼痛は「明らかな組織や神経の損傷を伴わずに生じる痛み」と定義される。第54回日本慢性疼痛学会(2月22~23日)でがん研有明病院(東京都)腫瘍精神科公認心理師の川居利有氏は、痛覚変調性疼痛を脳の知覚回路の視点から捉えることの重要性、治療戦略について解説。「痛覚変調性疼痛の治療では、自力でのプラセボ機能の改善が目標となる」と述べた。・・・ 〔MT Case Reports〕オピオイド鎮痛薬により診断が困難だった潰瘍性大腸炎 自己免疫疾患に伴う関節炎は多様な症状を呈し、原疾患の診断に難渋する場合がある。安易な鎮痛薬の処方は症状が隠されてしまうケースもあり、注意が必要だ。高知大学病院麻酔科(麻酔・疼痛)の村上翼氏は第54回日本慢性疼痛学会(2月22~23日)で、非麻薬性オピオイド鎮痛薬ブプレノルフィンテープの処方により下痢症状がマスクされたことで診断が遅れ、同薬の中断により潰瘍性大腸炎が判明した30歳代女性症例を紹介した。・・・ 〔MT Case Reports〕帯状疱疹後神経痛として治療、片頭痛の70歳代女性 友愛医療センター(沖縄県)麻酔科の赤嶺智教氏は第54回日本慢性疼痛学会(2月22~23日)で、帯状疱疹後神経痛(PHN)として治療され疼痛コントロール不良のため同院受診となった70歳代女性の片頭痛症例を紹介。「病歴や疼痛の経過、症状などを慎重に聴取することにより、PHNとされていた片頭痛を適切に診断でき、内服加療により疼痛コントロールが得られた」と報告した。・・・ 「運動誘発性鎮痛」の阻害因子と治療戦略 慢性疼痛治療の第一選択としては、運動誘発性鎮痛(exercise-induced hypoalgesia;EIH)が推奨されるが、その効果に乏しい患者も一定数存在する。これらの非奏効例は、EIHの効果を阻害する複数の阻害因子を保有していると考えられる。神戸学院大学大学院総合リハビリテーション学研究科(兵庫県)/済衆館病院(愛知県)リハビリテーション技術科の山口修平氏は、第54回日本慢性疼痛学会(2月22~23日)で、EIHの阻害因子とその因子への対処法について、これまでの所属研究室での自験例を中心に解説。・・・ 〔MT Case Reports〕対人関係への介入で月経困難が改善した30歳代女性 低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)を用いても改善しない月経困難症や月経前症候群(PMS)は、治療に苦慮する場合が多い。解読カイロプラクティック(東京都)院長の山口純子氏は第54回日本慢性疼痛学会(2月22~23日)で、コミュニケーション方法の修正によりLEP非奏効のPMSが改善した30歳代女性症例を紹介。「PMSや月経困難症は、パートナーとの対等な関係構築により改善しうることが示唆された」と述べた。・・・ 2025年開催学会レポート一覧に戻る