深刻化する若手医師の「循環器内科離れ」-特にインターベンション施行医の減少は急性心筋梗塞(AMI)の救命率および死亡率に直結するとあって日本心血管インターベンション治療学会(CVIT)は危機感を募らせています。今回は、循環器内科医増加に向けた議論・発表に加え、血管内治療(EVT)における血栓病変や造影剤使用量の低減に関する話題など、明日からの診療に役立つ演題についても取材しました。 造影剤使用量を大幅低減できた対策とは? 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)施行時には、造影剤使用量が増えるほど造影剤腎症(CIN)の発症リスクが高まることが知られている。一方、診断精度と安全性を両立させる必要があることから、造影剤の希釈や造影回数の抑制は容易でなく、造影剤使用量の低減が大きな課題となっている。東宝塚さとう病院(兵庫県)コメディカル部放射線室の有田豊広氏は、第33回日本心血管インターベンション治療学会(CVIT2025、7月17~19日)で、造影剤使用量の低減に向けた自施設での取り組みを報告。「対策により、月当たりの平均造影剤使用量が初めて100mLを下回り86.8mLまで低減できた」と発表した。・・・ 慢性血栓病変を認識できず症状が増悪した不成功例 慢性血栓病変は、存在を認識しないまま治療を行うと重篤な合併症や病状の悪化を来す場合がある。急性血栓病変と異なり、明らかな徴候を示さないケースもあるため慎重な評価が重要だ。TOWN訪問診療所城南院(東京都)院長の宇都宮誠氏は第33回日本心血管インターベンション治療学会(CVIT2025、7月17~19日)で、慢性血栓病変を認識できずに血管内治療を行った結果、症状が増悪して最終的に下肢切断に至った70歳代男性の症例を報告。「ガイドワイヤがスムーズに通過したときほど油断せず、常に血栓の存在を念頭に置き、適切な治療戦略を立てることが重要だ」と自省するとともに注意喚起した。・・・ 若手だけの夜間帯、急性冠症候群にどう対応する? 近年、複雑な解剖学的構造(complex anatomy)を有する症例に対しても、経⽪的冠動脈インターベンション(PCI)が広く施行されるようになった。中でも治療と手技の難易度が高い急性冠症候群(ACS)では、術者および施設におけるPCI症例数が増えるほど死亡率/合併症リスクの低減に寄与することが知られている。一方で、夜間帯には経験の浅い若手医師・スタッフのみでACSに対応しなければならないケースが少なくない。国立病院機構東京医療センター循環器内科の宮﨑良央氏は第33回日本心血管インターベンション治療学会(CVIT2025、7月17~19日)で、夜間帯のcomplex anatomyを有するACSへの取り組みについて、自験例を交えて報告した。・・・ 不成功例から学ぶ血栓吸引デバイスの有用性と限界 慢性下肢閉塞性動脈疾患(LEAD)などに見られる器質化血栓病変は、抗凝固薬などの抗血栓薬の効果が乏しく血管前処置に難渋するケースが少なくない。機械的血栓切除デバイスの有用性が報告されているが、日本では未承認のため、血栓吸引デバイスなどが用いられるのが現状だ。カレス記念病院(札幌市)循環器内科部長の丹通直氏は、第33回日本心血管インターベンション治療学会(CVIT2025、7月17~19日)で器質化血栓病変に対する血管前処置に血栓吸引デバイスを使用した自験例(不成功例を含む)を報告。「血栓吸引デバイスは手技成功率の改善が期待できる半面、血栓の性状によっては効果が限定的だ」と発表した。・・・ インターベンション施行医増加への鍵は「熱意」! 近年、業務負担や訴訟リスクの大きさから若手医師の「外科離れ」が叫ばれている。しかし、診療科別に2014年と2022年の医師数変化率を見ると、外科の-3.8%に対し、循環器内科は-6.9%と減少幅が大きい。こうした事態を憂慮する日本心血管インターベンション治療学会(CVIT)は、特にインターベンション施行医を「絶滅危惧種」と位置付け、学会を上げて専門医の確保・増加に向けた議論を重ねている。NTT東日本関東病院(東京都)循環器内科主任医長/冠動脈カテーテル治療部門長/心臓病集中治療室(CCU)室長の割澤高行氏は、CVIT会員69人を対象としたアンケート結果について第33回同学会(CVIT2025、7月17~19日)で報告。「若手医師にインターベンション施行医の魅力を伝える上で、『熱意』が有効と回答した割合は約80%に上った」と発表した。・・・ 残存する血栓に抗凝固薬+フットポンプが有用 血管内治療(EVT)において血栓病変は、遠位塞栓やSlow Flow、残存狭窄のリスクとなる上、薬剤やデバイスの多様化、エビデンス不足などにより治療に難渋するケースが少なくない。森之宮病院(大阪市)循環器内科の福永匡史氏は、抗血栓療法における自施設での取り組みについて第33回日本心血管インターベンション治療学会(CVIT2025、7月17~19日)で報告。「残存する血栓に対しては、抗凝固薬に加えフットポンプの活用が有用だ」と発表した。・・・ 2025年開催学会レポート一覧に戻る