今年の米国心臓協会(AHA 2025)では、幅広い領域から臨床に直結する新たなエビデンスが提示された。心筋症では、経口選択的心筋ミオシン阻害薬2剤に関する良好な結果が報告され、治療選択を考える上で重要なデータが示された。心房細動では、手術や感染症などの急性ストレスに関連する発症例の特徴が明らかにされ、適切な予防や管理の必要性が浮き彫りとなった。さらに、コロナ罹患後症状に対する運動介入の有効性、心血管疾患の初発予防におけるPCSK9阻害薬の位置付けなど、今後の診療を支える重要な知見が相次いだ。 肥大型心筋症治療薬aficamten、男女とも有効 経口選択的心筋ミオシン阻害薬aficamtenは、心筋の過収縮を抑制して左室流出路(LVOT)圧較差を減少させる機序を有し、閉塞性肥大型心筋症(HOCM)治療の新たな選択肢として期待されているが、治療効果の性差に関しては現状エビデンスが少ない。米・Harvard Medical SchoolのXiaowen Wang氏らは、同薬の有効性および安全性を検討した国際第Ⅲ相二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験SEQUOIA-HCMのサブ解析を実施。その結果、「主要評価項目および副次評価項目に関する有意なベネフィットは男女を問わず確認された」と米国心臓協会(AHA 2025、11月7~10日)で発表。詳細はirc Heart Fail(2025年11月8日オンライン版)に同時掲載された。・・・ ストレスに関連する心房細動の特徴が判明 心臓手術・非心臓手術、感染症、急性心血管疾患などの可逆的な急性生理的ストレス因子は、心房細動(AF)の発症と関連することが知られている。しかし、ストレス関連AFの疫学は十分に解明されておらず、非ストレス(原発性)AFと予防・管理法が異なるかを検討した研究も少ない。米・Broad InstituteのJulian S. Haimovich氏らは、同国のプライマリケアを受診した高齢者3万例超を対象としたクラスターランダム化比較試験(RCT)VITAL-AFのデータを解析。新規診断AFに占めるストレス関連AFの割合、危険因子、転帰などを明らかにしたと、米国心臓協会(AHA 2025、11月7~10日)で発表した。結果の詳細はCirculation(2025年11月8日オンライン版)に同時掲載された。・・・ 高用量インフルワクチン、CVDの有無を問わず有効 高用量不活化インフルエンザHAワクチン(HD-IIV)は、標準用量の不活化インフルエンザHAワクチン(SD-IIV)と比べ、多様な入院転帰に対する優れた予防効果を示している。しかし、特定の心血管(CV)転帰に対する有効性や、心血管疾患(CVD)既往例における有効性については十分に解明されていない。デンマーク・Copenhagen University HospitalのNiklas D. Johansen氏らは、同国とスペインで行われたHD-IIVのランダム化比較試験(RCT)2件を統合した二次解析としてFLUNITY-HD研究を実施。その結果、SD-IIV群と比べ、HD-IIV群はCVD既往の有無を問わず有効性が高く、心不全入院などCV転帰の改善も示されたと、米国心臓学会(AHA 2025、11月7~10日)で発表した。結果の詳細はCirculation(2025年11月10日オンライン版)に同時掲載された。・・・ レジスタンス運動がコロナ後遺症に有効 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後症状(Long COVID)は、身体機能やQOLを低下させることが知られている。レジスタンス運動がLong COVIDに有効とのシステマチックレビューがあるが、エビデンスの確実性が低く、有害事象に関するデータも乏しい。英・University of GlasgowのStuart R. Gray氏らは、4週間以上持続するLong COVID患者を対象にレジスタンス運動の有効性と安全性を検証するランダム化比較試験(RCT)を実施。通常治療単独の対照群と比べ、3カ月のレジスタンス運動を行った介入群では歩行機能や健康関連QOLなどが有意に改善したと、米国心臓学会(AHA 2025、11月7~10日)で発表した。結果の詳細はJAMA Netw Open(2025; 8: e2534304)に同時掲載された。・・・ マバカムテンは単独でも肥大型心筋症に有効 今年(2025年)5月に発売された選択的心筋ミオシン阻害薬マバカムテン(商品名カムザイオス)は閉塞性肥大型心筋症(HOCM)に対する適応を持つ初の疾患修飾的治療薬であり、新たな選択肢として注目を集めている。米・Emory UniversityのOzlem Bilen氏は米国心臓学会(AHA 2025、11月7~10日)で、同薬の有効性および安全性を患者レベルデータで検討する現在進行中のグローバルリアルワールド研究COLLIGO-HCMにおける新たなエビデンスを報告。「マバカムテン単独群は、基礎療法併用群と比べ同等の有効性と安全性を示した」と発表した。詳細はCirc Genom Precis Med(2025年11月10日オンライン版)に同時掲載された。・・・ エボロクマブ、心血管疾患「初発」予防でも好結果 世界において心血管疾患(CVD)は主要な死因であり、LDLコレステロール値の上昇はその重要かつ修正可能な危険因子である。PCSK9阻害薬は心筋梗塞(MI)/脳卒中既往例における二次(再発)予防効果が報告されているが、既往歴のない高リスク例における一次(初発)予防効果は明らかでない。米・Brigham and Women's HospitalのErin A. Bohula氏らは、MIや脳卒中の既往がない動脈硬化性疾患または糖尿病患者を対象にPCSK9阻害薬エボロクマブの有効性と安全性を検討する国際第Ⅲ相二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験VESALIUS-CVにおいて「エボロクマブは主要心血管イベント(MACE)のリスクを有意に低下させた」と米国心臓学会(AHA 2025、11月7~10日)で発表。詳細はN Engl J Med(2025年11月8日オンライン版)に同時掲載された。・・・ 2025年開催学会レポート一覧に戻る