網膜硝子体疾患は、加齢黄斑変性や糖尿病網膜症、網膜剝離など多岐にわたり、視機能に重大な影響を及ぼすことが知られています。今回は、近年話題の再生医療(自家iPS細胞由来網膜色素上皮細胞シート移植)に関する研究の他、抗VEGF療法の有効性、網膜剝離に関連した症例報告など、幅広い演題を取材してきました。 術後糖尿病黄斑浮腫、アフリベルセプト8mgへの切り替えが奏効 糖尿病黄斑浮腫(DME)に対する治療の第一選択は抗血管内皮増殖因子(VEGF)療法だが、硝子体術後DMEに治療抵抗性を示すケースが報告されている。他方、トリアムシノロンアセトニド硝子体内注射(IVTA)やトリアムシノロンアセトニドテノン囊下注射(SSTA)といったステロイド局所投与の有効性が示されているものの、眼圧上昇、水晶体混濁などの副作用が指摘されている。群馬大学眼科学教室の齊藤千真氏は第64回日本網膜硝子体学会(12月5~7日)で、ステロイド反応性の術後DMEに対しアフリベルセプト8mgへの切り替えが奏効した70歳代女性の症例を紹介した。・・・ ファリシマブ、網膜色素線条への視力改善効果は? 網膜色素線条(AS)はブルッフ膜を構成する弾性線維に変性、断裂が生じる疾患で、中心窩に脈絡膜新生血管(CNV)が発生した症例は視力予後が不良である。今年(2025年)5月、抗血管内皮細胞増殖因子(VEGF)-A/抗アンジオポエチン(Ang)-2ヒト化二重特異性モノクローナル抗体ファリシマブが、国内初のAS治療薬としての適応を取得した。琉球大学大学院眼科学講座教授の古泉英貴氏は、適応拡大の根拠となった国内多施設共同非盲検単群第Ⅲ相試験NIHONBASHIについて、新たに48週までのデータを第64回日本網膜硝子体学会(12月5~7日)で発表した。・・・ Wagner-Stickler症候群、初回から輪状締結術併用を Wagner症候群とStickler症候群は、いずれも周辺部に高度な硝子体変性を呈する遺伝性硝子体網膜変性疾患である。網膜裂孔および網膜剝離の合併リスクが高く、治療介入後であっても発症が報告されている(Clin Ophthalmol 2016; 10: 1531-1534)。杏林大学眼科学教室の福田泰雅氏は第64回日本網膜硝子体学会(12月5~7日)で、両症候群に対する硝子体手術後に裂孔原性網膜剝離(RDD)を生じ、網膜復位のために輪状締結術を要した30歳代女性の2症例を紹介。「術後のRDD合併リスクを考慮し、初回硝子体手術から輪状締結術の併用も検討すべきことが示唆された」と述べた。・・・ 網膜剝離を機にロケット花火外傷後の残存異物を発見! 花火による眼外傷は若年男性に多く、特にロケット花火は予測不能な飛行軌道により眼球破裂や眼内異物、外傷性白内障、網膜剝離などを引き起こし、視機能に重篤な後遺症を来す場合がある。多くは受傷直後に受診し処置されるが、まれに無症候性の眼内異物が長期間未発見のまま経過するケースが報告されている(Pediatr Emerg Care 2008; 24: 409-414)。佐賀大学眼科学講座の黒木洋平氏は第64回日本網膜硝子体学会(12月5~7日)で、ロケット花火外傷後に約20年間無症状で経過し、網膜剝離の診断を契機に偶発的に網膜下異物が発見された30歳代男性の症例を紹介した。・・・ 世界初!加齢黄斑変性へのiPS細胞治療の可能性 新生血管型加齢黄斑変性(nAMD)に対する標準治療は抗血管内皮細胞増殖因子(VEGF)療法だが、主に新生血管および進行の抑制が目的であり治療継続の必要がある。疾患の背景には網膜色素上皮(RPE)の変性があるため、根治的治療として健常なRPEの移植が期待されている。神戸市立神戸アイセンター病院院長の栗本康夫氏は、世界初の人工多能性幹(iPS)細胞治療となるnAMDに対する自家iPS細胞由来RPEシート移植を実施。術後10 年間の成績を第64回日本網膜硝子体学会(12月5~7日)で報告し、「今回、iPS細胞治療の長期にわたる安全性と有効性が示された結果は意義深く、眼科領域にとどまらず幅広い領域での進展が期待される」と述べた。・・・ 2025年開催学会レポート一覧に戻る