空気中の結核菌の9割は「ただの呼気」で生成

  • Facebookでシェアする
  • Medical Tribune公式X Xでシェアする
  • Lineでシェアする
感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

研究の背景:結核菌は空気感染する代表的細菌

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)で脚光を浴びた「空気感染」であるが、エアロゾルを介した感染も、見た目としては「空気中を通して感染する」ため、これも「空気感染」に含めるという見解がある。

 これまで理解されてきた「空気感染とは、感染予防のためにN95マスクを要する感染様式」という理解から、もう少し広げて考える必要が出てくることになる。

 さて、今回は議論の余地があるその話ではなく、空気感染を起こす代表的な感染症である結核についてである。結核菌は、咳嗽などで患者から排出されるが、これが空気中に飛沫やエアロゾルとして放出され、その後水分が蒸発する。基本的にそのまま床などに落ちてしまうことが多いが、その後乾燥した菌体が舞い上がったり、空気中で乾燥が成立してしまったりすると、サージカルマスクを通り抜けるほど小さな結核菌が、呼吸を通してヒトに感染する。これが飛沫核感染、いわゆる空気感染である(図1)。

図1. 空気感染の仕組み

36962_fig01.jpg

(日本環境感染学会公式サイト掲載の「感染経路別予防策」を基に作成)

 さて、咳嗽が多いほど、また肺内の空洞が大きいほど、排菌量が多いとされている。実際に肺結核に罹患した場合、部屋の中の結核菌はどういう呼吸動作によって生成(排菌)されているのかを調べた研究が報告された(Am J Respir Crit Care Med 2022年5月18日オンライン版)。

倉原 優 (くらはら ゆう)

国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科医師。2006年、滋賀医科大学卒業。洛和会音羽病院での初期研修を修了後、2008年から現職。日本呼吸器学会呼吸器専門医、日本感染症学会感染症専門医、インフェクションコントロールドクター、音楽療法士。自身のブログで論文の和訳やエッセイを執筆(ブログ「呼吸器内科医」)。著書に『呼吸器の薬の考え方、使い方』、『COPDの教科書』、『気管支喘息バイブル』、『ねころんで読める呼吸』シリーズ、『本当にあった医学論文』シリーズ、『ポケット呼吸器診療』(毎年改訂)など。

  • Facebookでシェアする
  • Medical Tribune公式X Xでシェアする
  • Lineでシェアする