研究の背景:安全な気道管理のためのチーム戦略 困難気道(difficult airway)は、手術室だけでなく救急外来、集中治療室(ICU)、病棟での院内急変対応など、さまざまな場面で遭遇する可能性がある。救急の現場では、低酸素症の進行が速く、循環動態も不安定で、準備の時間が限られるなど条件が不利になりやすいが、さらに困難気道が重なると短時間で危機的状況へ発展しかねない。 一方で、気道管理の成否が実施者の経験や技量に依存することも事実である。未熟な手技や不適切な試行そのものが困難気道を生み、合併症リスクを高めることがある。だからこそ、適切なデバイスの選択・使用〔特にビデオ喉頭鏡や声門上気道デバイス(supraglottic airway device;SAD)〕、アルゴリズムの共有と理解、チームとしての協働によって患者、医療者双方の安全性を確保する必要がある。 困難気道に対しては、これまで国内外で幾つものガイドライン(GL)が出されており、2021年にはカナダ、2022年には米国のGLが改訂。今回は、英国のDifficult Airway Society(DAS)が、成人の予期せぬ気管挿管困難(unanticipated difficult tracheal intubation)に対するGLを改訂したので紹介する(Br J Anaesth 2026; 136: 283-307)。 DAS GL2025では、気管挿管に関する65の推奨が提示された。アルゴリズムは2015年版(Br J Anaesth 2015; 115: 827-848)のPlan A→B→C→Dという形を保ちつつ、初回気管挿管の成功率の最大化、気道管理の全過程での持続的酸素化(peroxygenation)、さらに不成功を早期に認識して次のPlanへ速やかに移行することの重要性を強調している(図1)。 図1.予期せぬ気管挿管困難の管理 以下、本GLの要点を整理する。