ドクターズアイ 小島淳(循環器)

T2T尿酸管理は心血管イベントを減らすのか

痛風患者11万人の大規模観察研究

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

研究の背景:キサンチンオキシダーゼ阻害薬の「失敗」をどう読み替えるか

 痛風・高尿酸血症は関節疾患であると同時に、心血管疾患リスクの高い全身性病態である。疫学研究では、痛風患者で心筋梗塞、脳卒中、心不全、心血管死亡のリスク上昇が一貫して示されてきた。一方で、「尿酸を下げること」が心血管イベント抑制につながるかは明確でない

 日本におけるランダム化比較試験(RCT)FREEDでは、キサンチンオキシダーゼ阻害薬フェブキソスタットが脳・心・腎の主要複合イベントを抑制したが、冠動脈イベント単独の抑制は明瞭でなかった(Eur Heart J 2019; 40: 1778-1786)。さらに、サブ解析では高感度C反応性蛋白(CRP)の有意低下は示されず、尿酸低下と炎症制御が必ずしも一致しない可能性が示唆された(Cardiovasc Drugs Ther 2023; 37: 965-974)。虚血性心疾患患者を対象としたRCTであるALL-HEARTでも、アロプリノールにより尿酸は低下したが主要心血管イベントは抑制されなかった(Lancet 2022; 400: 1195-1205)。加えて、メンデルランダム化(MR)研究は尿酸と動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の直接因果を支持していない(PLoS Med 2019; 16: e1002937)。

 ただし、これらの研究には、①痛風患者が十分に含まれていない、②治療目標到達(Treat-to-Target;T2T)の達成度を主要軸にしていない、③尿酸塩結晶に伴う慢性炎症という病態軸を評価していない-という共通の限界がある。以上のような背景の下、血清尿酸値6mg/dL未満を目標とするT2T戦略そのものと心血管予後の関連を検証したのが、Edoardo Cipolletta氏らによる報告である(JAMA Intern Med 2026年1月26日オンライン版)。

小島 淳(こじま すなお)

桜十字八代リハビリテーション病院副院長、熊本大学客員教授

1993年熊本大学医学部卒業後、循環器内科に入局し、国立循環器病研究センターで臨床・研究に従事。熊本大学病院勤務を経て2006年に医学博士を取得。2018年川崎医科大学総合内科学主任教授、2020年熊本大学客員教授、2021年より桜十字八代リハビリテーション病院副院長を務める。日本内科学会、日本循環器学会、日本心臓病学会、日本超音波医学会、日本脈管学会、日本救急医学会、日本心臓リハビリテーション学会、日本痛風・核酸代謝学会など多数の専門医資格を有し、学術賞受賞や各種ガイドライン策定にも参画。「くまもとハートの会」代表理事として地域医療にも尽力する。研究は循環器内科学を基盤に、大気汚染と循環器疾患、尿酸代謝と心血管イベントの関連を中心とした大規模臨床研究・疫学解析を推進し、「医学と環境」を軸に国際的に成果を発信している。

小島 淳
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