ドクターズアイ 岩井拓磨(消化器外科)

大腸がん標的治療の前方化と後方治療の課題

エンコラフェニブ、セツキシマブ導入後をどう見るか

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研究の背景:BEACONが治療選択を、BREAKWATERがそのタイミングを変えた

 BRAFV600E変異は、大腸がんの中で5~10%に見られる予後不良のサブタイプとして知られる。このBRAF変異大腸がん治療を大きく変えたのがBEACON試験である。同試験の結果、既治療例に対する二次治療としてBRAF阻害薬エンコラフェニブ+EGFR阻害薬セツキシマブ(EC)療法が標準となり、BRAF変異大腸がんは「化学療法が効きにくい疾患」から「Targeted Therapy(標的治療)が可能な疾患」へとパラダイムシフトした(J Clin Oncol 2021; 39: 273-284)。ただし実臨床では、まず化学療法を導入し、タイミングを逃さずEC療法へ移行する、という時間軸や判断指標が悩みどころであった。
本稿の主題は免疫療法が第一選択となるMSI-High/dMMR症例ではなく、MSS/pMMRのBRAFV600E変異陽性大腸がんである。

 この標的治療を一歩進めたのがBREAKWATER試験である(N Engl J Med 2025; 392: 2425-2437)。同試験は、一次治療でのEC+mFOLFOX6(フルオロウラシル+レボホリナートカルシウム+オキサリプラチン)療法の有効性を示し、同レジメンは昨年(2025年)11月に日本でも承認された(関連記事:「エンコラフェニブ、結腸・直腸がんに対する併用療法の一変承認を取得」)。一方で、EC療法が早い段階で導入される以上、無効後の治療をどう設計するかという疑問がわれわれに問われている。本稿ではBREAKWATER試験の成績を概説し、その先の後方治療を考えるヒントとしてBAYONET試験やLadaika氏らの報告にも触れる。

岩井 拓磨(いわい たくま)

日本医科大学 消化器外科 病院講師

2007年日本医科大学 医学部卒業。同大学 消化器外科に入局し、助教、関連病院勤務を経て、同大学院 外科学講座にて博士号を取得(2018年Ph.D.)。大学院在学中には、Liquid Biopsyを用いた腫瘍評価法(第7215675号)や、血中DNA分解酵素活性を利用した絞扼性腸閉塞診断法(第6844833号)を開発し、特許取得するなど、臨床現場の課題解決に早くから注力。現在は大腸癌の手術・薬物療法を軸とした集学的治療のエキスパートとして臨床に当たる傍ら、個別化治療の最適化を目指したトランスレーショナルリサーチにも取り組む。

主な所属:日本内視鏡外科学会(評議員・技術認定医)、日本大腸肛門病学会(評議員・専門医)、日本外科学会(専門医・指導医)、日本消化器外科学会(専門医・指導医)、日本消化器病学会(関東支部評議員・専門医・指導医)、ESMO memberほか。

岩井 拓磨
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