ドクターズアイ 柳靖雄(眼科)

ヨガで機能改善した網膜こそ「脳への窓」である

最新画像診断技術を用いた科学的実証

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研究の背景:中枢神経系の延長線上にある網膜

 網膜は単なる視覚情報の受容体ではなく、中枢神経系(CNS)の直接的な延長線上にある組織である。発生学的な起源を共有する網膜は、脳と同様に高度な血液網膜関門(BRB)を有し、脳内の微小環境を忠実に反映している。網膜を「脳への窓(Window to the Brain)」として捉える視座は、全身の血管健康や神経変性疾患の進行を、非侵襲的かつリアルタイムに観察することを可能にする(Neuroophthalmology 2025; 50: 1-12)。

 今回紹介する論文(Invest Ophthalmol Vis Sci 2025; 66: 62)の戦略的な重要性は、これまで主観的なリラクゼーション効果として語られがちであったヨガという身体技法を、細胞レベルおよび生理学的な定量指標へと落とし込んだ点にある。

 Retinal Function Imager(RFI)や光干渉断層計血管撮影(OCTA)といった先端技術を用い、網膜という極めて代謝需要の高い組織において、「神経血管ユニット(Neurovascular Unit;NVU)」の健全性と「ミトコンドリアの電子伝達系機能」を可視化した。これは単なる健康増進の報告ではなく、CNSの健全性を網膜という動的な生理標本において再構築し、定量化した科学的実証である。

柳 靖雄(やなぎ やすお)

医療法人社団祥正会お花茶屋眼科手術外来院長、横浜市立大学視覚再生外科学客員教授、デューク・シンガポール国立大学医学部Adjunct Professor

東京大学医学部を卒業(1995年、MD)し、同大学大学院で医学博士号を取得(2001年、PhD)。基礎医学に強固な学術的バックグラウンドを持ち、200本以上の科学論文を執筆、国内外で10以上の賞を受賞。東京大学医学部眼科学教室講師(2012~15年)、デューク・シンガポール国立大学医学部准教授(2016~20年)、旭川医科大学眼科学教室教授(2018~20年)を歴任し、現在は横浜市立大学視覚再生外科学客員教授(2020年~)およびデューク・シンガポール国立大学医学部Adjunct Professor(2020年~)として国際共同研究に積極的に関与している。専門は黄斑疾患で、新規治療薬に関する特許を多数出願。スタンフォード大学とエルゼビア社が2024年に発表した「世界のトップ2%の科学者リスト」に選出された。DeepEyeVisionの取締役としてAI技術の開発に携わり、国際誌「TVST」や「Scientific Reports」の編集者としても日本のプレゼンス向上に貢献。都内のクリニックでは質の高い診療を提供し、地域医療にも尽力。現在、医療経済研究、創薬、国際共同臨床研究など多岐にわたる分野で積極的に活動している。

柳 靖雄
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