ドクターズアイ 山田悟(糖尿病)

カロリー制限による減量は血糖改善を保証しない

2種のVLCDフォーミュラの比較試験から

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研究の背景:カロリー制限は『糖尿病治療ガイド2024』ではなお唯一無二の糖尿病食事療法

 以前、日本糖尿病学会の『「糖尿病診療ガイドライン2024』において、食事療法の内容が大きく変更され、糖質制限食やカーボカウント法などのカロリー制限以外の食事法の有効性が認められるとともに、カロリー制限食についてはBMI 25以上の人に限定されて推奨されるようになったことをお伝えした(関連記事「【緊急寄稿】大改訂!糖尿病食事療法ガイドライン」)。

 この『「糖尿病診療ガイドライン2024』が刊行されたのが2024年5月であるが、残念なことに、その半年後、2024年11月に同じく日本糖尿病学会から刊行された『糖尿病治療ガイド2024』(参考文献を盛り込み学術的に作成される糖尿病診療ガイドラインと比較して、使い勝手を重視して結論だけを記載し、薄い書籍となっている)においては、またもカロリー制限食が唯一無二の食事療法として取り上げられてしまっている。

 薬物療法アルゴリズムにおいては、肥満者と非肥満者で病態が異なることを理由に、異なる薬物療法を推奨している日本糖尿病学会が(糖尿病 2023; 66: 715-733Diabetol Int 2024; 15: 327-345)、それも、たかだか300kcalほどしかエネルギーロスを生じないSGLT2阻害薬について、GLP-1受容体作動薬と同様に「痩せの患者では体重減少に注意」とまで付記する日本糖尿病学会が、どうして食事療法については画一的に(痩せの患者も含めて)カロリー制限食を推奨できるのか不思議でならない。

 しかし、同様の議論(同じ2型糖尿病ででも肥満と非肥満とを区別するべきか、区別する必要はないのか、という議論)は世界的にも存在するかもしれない。

 2025年1月に国際糖尿病連合(IDF)が5型糖尿病を提唱したのを契機に、痩せの糖尿病(5型糖尿病)を典型的な肥満合併2型糖尿病と区別しようという動きは明確に世界に広がっている(Lancet Glob Health 2025; 13: e1771-e1776)。すなわち、肥満である2型糖尿病と非肥満である5型糖尿病を区別すべきという概念である。

 一方で、(内臓)脂肪の蓄積が病的になる閾値は人によって異なっており、肥満の有無にかかわらず2型糖尿病の病因は同一であり、糖尿病患者は誰しもが減量すべきであるというPersonal Fat Threshold Hypothesis(「個人別体脂肪閾値仮説」とでも呼称するべきか)も提唱されているのである(Clin Sci 2015; 128: 405-410Clin Sci 2023; 137: 1333-1346)。これはすなわち肥満の定義の問題なのであって、糖尿病患者は誰しもが痩せるべきという概念である。

 そんな中、2種の液体フォーミュラで超低カロリー食(very low-calorie Diet;VLCD)を実施し、同等に体重を減量しても、2型糖尿病の寛解率がエネルギー比率の相違によって異なる一方で、体重減量レベルの相違は2型糖尿病の寛解率に影響を与えなかったことを示す論文がIDFの機関誌である(山田註:IDFの公式サイトにはそうした記述が見当たらなくなっているが)Diabetes Res Clin Practに報告された(Diabetes Res Clin Pract 2026; 233: 113159)。カロリー制限による減量は血糖改善を保証しない(おそらくpersonal fat threshold hypothesisは間違っている)ことを示す知見としてご紹介したい。


山田 悟(やまだ さとる)

1994年、慶應義塾大学医学部を卒業し、同大学内科学教室に入局。東京都済生会中央病院などの勤務を経て、2002年から北里研究所病院で勤務。 現在、同院糖尿病センター長。診療に従事する傍ら、2型糖尿病についての臨床研究や1型糖尿病の動物実験を進める。日本糖尿病学会の糖尿病専門医および指導医

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