"中進国のわな" 病院はきれいで安いけど

在イラン日本国大使館 竹川僚一

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 産婦人科医として勤務していた20年ほど前に、休暇は必ずタイの島々で過ごす同僚が、「(タイの)大使館の医者という仕事があるそうですよ」と、とてもうらやましそうに話してくれました。留学できるほどの探究心はないけれど、海外生活には憧れていたところに聞いた「医務官」の話には、ずいぶん惹かれるものがありました。するとそれからすぐに、「在外公館医務官募集」が同窓会誌に掲載され、母校での面接の後に担当教授から快く「僕も若ければ行きたいくらいだよ。良ければ2年後に赴任してください」と、内定をいただいてしまいました。

 しかし、よくよく考えてみると、以下のような心配がありました。

・卒後研修は産婦人科単科で、新生児を除けば男性を診察したことがほとんどない
・学位論文の査読担当の先生に「英語がmiserableです」と書かれた
・子供3人を海外に連れて行っても大丈夫か(赴任時は4人に増えていた)

 それでも、女性以外も診られるようになりたいと思っていたのと、何よりもう決めてしまって「行くしかない」状況でした。大学からの出向で2年間の任期付きだからなんとかなるだろうと、外務省にとってはずいぶん乱暴で迷惑な話だったと反省しています。

竹川 僚一(たけかわ りょういち)

1961年生。1987年自治医科大学卒業後、京都府立医科大学産婦人科入局。京都府内の公立病院産婦人科に勤務。2002~2004年、自治医大地域医療学教室から外務省へ出向(在モンゴル大使館勤務)。新潟県南魚沼郡大和町(現・南魚沼市)ゆきぐに大和病院、厚生労働省成田空港検疫所勤務を経て、2010年から外務省医務官として、在モンゴル、カラチ(パキスタン)、イラン大使館(総領事館)勤務。産婦人科専門医

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