統合失調症の一部に自己抗体が関連か?

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 卵巣奇形腫に随伴する抗NMDA(N-メチル-d-アスパラギン酸)受容体抗体脳炎は、2007年にDalmauらにより報告された。不随意運動などの神経症状を伴うものの、その激しい精神症状は緊張病性の統合失調症と診断されうるものである。卵巣腫瘍の切除により劇的に回復することから、おそらく卵巣奇形腫内に神経様組織がつくられてしまったために、神経組織に対する自己抗体が産生されることが原因と考えられる。NMDA受容体は、以前から統合失調症の原因分子として着目されており、最近のゲノムワイド関連研究でも、NMDA受容体サブユニット遺伝子と統合失調症との関連が見いだされている。その後、卵巣奇形腫を伴わない症例も報告され、統合失調症の中にはこのような辺縁系脳炎の患者が少なからず含まれているのではないか、と考えられるようになった。統合失調症において、こうした自己抗体が発症に関与している者がいるかどうかを探索した日本発の研究は、この領域に大きなインパクトを与えると考え、紹介する(Cell Rep Med 2022; 3: 100597)。

加藤 忠史(かとう ただふみ)

 順天堂大学精神医学講座主任教授。1988年東京大学医学部卒業、同病院で臨床研修、1989年滋賀医大精神医科大学講座助手、1994年同大学で医学博士取得、1995年米・アイオワ大学精神科に留学(10カ月間)。帰国後、1997年東京大学精神神経科助手、1999年同講師、2001年理化学研究所脳科学総合研究センター精神疾患動態研究チームリーダー、2019年理化学研究所脳神経科学研究センター副センター長を経て、2020年4月から現職。

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