重症市中肺炎に全身性ステロイドはありか?

  • Facebookでシェアする
  • Medical Tribune公式X Xでシェアする
  • Lineでシェアする
感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

研究の背景:軽症の市中肺炎に対するエビデンスはない

 約半年前にこの連載で、「市中肺炎に全身性ステロイドは容認されるか?」という記事を書いた。当時のメタ解析では、全身性ステロイドと全死亡率の間に関連はないことが示されており、ルーチンで市中肺炎に全身性ステロイドを使う必然性はないという趣旨の解説を行った。

 今回紹介するCAPE COD研究(N Engl J Med 2023年3月21日オンライン版)は、この考え方を覆す可能性を秘めている。

 軽症の市中肺炎に全身性ステロイドを使うエビデンスはないが、例えば急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に関しては、早期の全身性ステロイドによって生存率が上昇する可能性が指摘されている(Intensive Care Med 2021; 47: 521-537)。そのため、一定以上の重症度であれば、全身性ステロイドがポジティブに作用するのでは、というのは臨床でも実感されるところである。

倉原 優 (くらはら ゆう)

国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科医師。2006年、滋賀医科大学卒業。洛和会音羽病院での初期研修を修了後、2008年から現職。日本呼吸器学会呼吸器専門医、日本感染症学会感染症専門医、インフェクションコントロールドクター、音楽療法士。自身のブログで論文の和訳やエッセイを執筆(ブログ「呼吸器内科医」)。著書に『呼吸器の薬の考え方、使い方』、『COPDの教科書』、『気管支喘息バイブル』、『ねころんで読める呼吸』シリーズ、『本当にあった医学論文』シリーズ、『ポケット呼吸器診療』(毎年改訂)など。

  • Facebookでシェアする
  • Medical Tribune公式X Xでシェアする
  • Lineでシェアする