親子そろって慢性咳嗽、遺伝する病気なの?

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研究の背景:単純でない慢性咳嗽の病態生理、遺伝性は不明

 慢性咳嗽は一般人口の約10%に見られる一般的な症状であり、QOLを著しく低下させ、病欠の増加につながる重要な健康問題である。しかし、そのメカニズムは完全には解明されていない。

 日本咳嗽学会に加盟する呼吸器科診療所または病院を受診した、8週間以上続く咳嗽を呈した患者を登録した研究(Respir Investig 2024; 62: 442-448)によれば、計334例の解析対象のうち、201例は単一の原因、113例は2つ以上の原因であることが判明しており、単純な病態生理ではないことが分かる。

 なお、この国内の研究では、慢性咳嗽の主な原因疾患は咳喘息92例(27.5%)、副鼻腔気管支症候群(SBS)36例(10.8%)、アトピー咳嗽31例(9.3%)、胃食道逆流症(GERD)関連咳嗽10例(3.0%)であり、重複疾患を1疾患としてカウントした場合、咳喘息36.7%、SBS21.4%、アトピー咳嗽20.2%、GERD関連咳嗽7.4%となっている。

 さて、近年注目されているのは、「親子そろって慢性咳嗽」というケースが存在することである。実臨床においても、母親と娘がともに呼吸器疾患で通院しているという事例は確かに経験する(経験上、通院しているのはほとんどが女性の親子である)。しかし、咳の遺伝性については過去にデータが示されていない。今回取り上げるのは、慢性咳嗽の親子間の一致を調べた研究である(ERJ Open Res 2024年8月5日オンライン版)。

倉原 優 (くらはら ゆう)

国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科医師。2006年、滋賀医科大学卒業。洛和会音羽病院での初期研修を修了後、2008年から現職。日本呼吸器学会呼吸器専門医、日本感染症学会感染症専門医、インフェクションコントロールドクター、音楽療法士。自身のブログで論文の和訳やエッセイを執筆(ブログ「呼吸器内科医」)。著書に『呼吸器の薬の考え方、使い方』、『COPDの教科書』、『気管支喘息バイブル』、『ねころんで読める呼吸』シリーズ、『本当にあった医学論文』シリーズ、『ポケット呼吸器診療』(毎年改訂)など。

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