研究の背景:件数は増加中も長期的な優越性が不明 直腸がん手術におけるロボット支援手術(da vinci手術)は、2018年度の診療報酬改定で保険適用が拡大されたことを受け、わが国で急速に普及が進んだ。全国的にも直腸がんのロボット支援手術数は加速度的に増加し続け、主要な病院では直腸がんに対するロボット手術が標準的な術式として、現在進行形で件数を伸ばしている状況にある。 特に、低位直腸がんの手術は、狭小な骨盤内での操作が難しく、従来の腹腔鏡手術では視野や操作性に制限があった。ロボット手術は、高い精密性と神経温存の可能性から、この難点を克服し、より質の高い手術を可能にすると期待されてきた。 しかし、これまでの大規模なランダム化比較試験(RCT)、例えばROLARR試験などでは、直腸がんに対するロボット手術は、腹腔鏡手術と比較して長期的な腫瘍学的優越性を示すには至らず「非劣性」が示されるにとどまっていた。このため、ロボット手術が明確な「長期腫瘍学的優越性」を持つのかどうかは、明確になっていなかった。 今回取り上げるREAL試験(Feng Q, et al. JAMA 2025; 334: 136-148)は、この課題に取り組むために企画された、直腸がんに対するロボット手術と腹腔鏡手術の長期成績を直接比較した初の大規模RCTである。本稿では、同試験の内容とそれに続いて巻き起こった結果の解釈に関する議論を紹介したい。