研究の背景:部分奏効例における最適な維持療法は未確立 ベドリズマブ(vedolizumab; VDZ)は腸管選択的に作用する抗α4β7インテグリン抗体として、潰瘍性大腸炎(UC)およびクローン病(CD)の中等症〜重症例に広く用いられている(N Engl J Med 2013; 369: 699-710、N Engl J Med 2013; 369: 711-21)。もともと、点滴静注(IV)製剤として上市されたが、近年は皮下注(SC)製剤が登場し、投与利便性や医療リソースの効率化が期待されている(Gastroenterology 2020; 158: 562-572.e12、J Crohns Colitis 2022; 16: 27-38)。 しかし、IV導入後に完全奏効に至らず、部分奏効(partial response)にとどまる症例のマネジメントは明確でない。多くの国ではIV 4週投与(q4w)への短縮強化が可能だが、日本では未承認であり、治療強化に制限を感じる場面が多い。 この課題に対して、イタリア・シチリアIBDネットワークが実施した前向き多施設研究PRIVEDOは、14週時点で部分奏効例を対象にIV強化とSC切り替えを比較した世界初の試験である(J Crohns Colitis 2025年10月13日オンライン版)。 ベドリズマブ皮下注製剤の第Ⅲ相試験VISIBLEがIV導入6週でSCへ移行したのに対し(Gastroenterology 2020; 158: 562-572.e12、J Crohns Colitis 2022; 16: 27-38)、本研究はより現実的な導入後中間期(14週)における切り替えを検証した点が特徴である。