〔編集部から〕気鋭のドクターが独自の視点で論考を展開する人気連載「Doctor's Eye」の執筆陣に、今月から新たに慶應義塾大学小児科専任講師の新庄正宜氏が加わりました。小児感染症領域を中心に、話題の最新論文を日常臨床の立場で徹底解説していただきます。 研究の背景:COVID-19パンデミックが獲得免疫プロセスに及ぼす影響は不明 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックでは、マスクの着用推奨や外出・保育施設登園の制限といった非薬物的介入(NPIs)が世界的に導入され、小児が日常的に呼吸器病原体に曝露される機会は急激に減少した。この介入は感染拡大を抑制する上で極めて有効であった一方、欧州では2022年にStreptococcus pyogenesによる侵襲性A群溶血性レンサ球菌(iGAS)感染症が小児(3~4歳など)で急増し、免疫獲得の遅れによる"免疫ギャップ"の存在が注目されている。しかし、COVID-19パンデミックが乳幼児において溶連菌感染を経て獲得免疫を形成していくという本来のプロセスに及ぼす影響については、十分に評価されてこなかった。 今回紹介する論文は、病院を受診した小児の血清(の抗体価)を地域社会における免疫の指標として、NPIs導入後にS. pyogenesおよび一般的な呼吸器病原体に対する抗体が低下しているのかどうかを検討した研究である(JAMA Netw Open 2025; 8: e2537808)。