ドクターズアイ 新庄正宜(小児科)

行動制限で「乳幼児の免疫が低下」は本当?

新型コロナに対する非薬物的介入前後で比較

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ
〔編集部から〕気鋭のドクターが独自の視点で論考を展開する人気連載「Doctor's Eye」の執筆陣に、今月から新たに慶應義塾大学小児科専任講師の新庄正宜氏が加わりました。小児感染症領域を中心に、話題の最新論文を日常臨床の立場で徹底解説していただきます。

研究の背景:COVID-19パンデミックが獲得免疫プロセスに及ぼす影響は不明

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックでは、マスクの着用推奨や外出・保育施設登園の制限といった非薬物的介入(NPIs)が世界的に導入され、小児が日常的に呼吸器病原体に曝露される機会は急激に減少した。この介入は感染拡大を抑制する上で極めて有効であった一方、欧州では2022年にStreptococcus pyogenesによる侵襲性A群溶血性レンサ球菌(iGAS)感染症が小児(3~4歳など)で急増し、免疫獲得の遅れによる"免疫ギャップ"の存在が注目されている。しかし、COVID-19パンデミックが乳幼児において溶連菌感染を経て獲得免疫を形成していくという本来のプロセスに及ぼす影響については、十分に評価されてこなかった。

 今回紹介する論文は、病院を受診した小児の血清(の抗体価)を地域社会における免疫の指標として、NPIs導入後にS. pyogenesおよび一般的な呼吸器病原体に対する抗体が低下しているのかどうかを検討した研究である(JAMA Netw Open 2025; 8: e2537808)。

新庄 正宜(しんじょう まさよし)

慶應義塾大学医学部小児科専任講師

1993年慶應義塾大学医学部卒業。国立霞ヶ浦病院、国立感染症研究所ウイルス第一部を経て、2013年より現職。慶應義塾大学病院感染制御部副部長も兼務。英国Birmingham Children's hospital、米国NIHに短期留学歴あり。小児科専門医・指導医、感染症専門医・指導医、ICD(インフェクションコントロールドクター)。また、感染症関連については幅広く活動し、日本小児感染症学会の理事、日本小児科学会代議員、日本感染症学会評議員、専門医試験委員会委員長を務める。

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