研究の背景:AMDの病態解明に新たな光 加齢黄斑変性(Age-related Macular Degeneration;AMD)は、先進国の高齢者人口における不可逆的な視力喪失の主たる原因である。世界の高齢化に伴い、AMDの有病率は着実に増加しており、まさに公衆衛生上の危機となりつつある。この進行性の網膜疾患は、鮮明な中心視力を担う黄斑部にダメージを与え、日常生活に不可欠な読み書きや顔の認識といった能力を奪う。 AMDの研究と治療は、病態が生じる「目」そのものに焦点を当ててきた。しかし、近年の目覚ましい研究の進展により、眼科疾患を「閉じた局所的な問題」として捉える従来の考え方を根底から覆す、新たな概念が登場している。それが「腸・網膜連関(Gut-Retina Axis)」である。一見すると目とは何の関係もないように思える腸の内部環境、特にそこに生息する膨大な数の腸内細菌叢(マイクロバイオーム)が、遠く離れた網膜の健康状態に深く関与しているという仮説である。 本稿では、この革新的な視点に基づき、AMDの病態解明に新たな光を当てた最新の研究成果を解説する(Ophthalmol Sci 2025; 6: 100920)。