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両手利きの子供は精神衛生上のリスク高い

 2011年08月08日 17:13

 【ロンドン】英国とフィンランドの研究から、英インペリアルカレッジ公衆衛生学部のAlina Rodriguez氏らは「両手が自由に使える両手利きの子供は、右利きあるいは左利きの子供と比べ、小児期に精神衛生、言語、学業上の問題を呈する確率が高い」との研究結果を米医学誌「Pediatrics」(2010; 125: e340-e348)に発表した。右利きの子供よりも、2倍の確率で言語障害と低学業成績が認められたという。

7,871例を調査

 両手利きの人は100人に約1人存在する。筆頭研究者のRodriguez氏らは両手利きの影響を調べるため、北フィンランド在住の両手利きの子供87例を含む7,871例の前向きデータを調査。質問票を用いて、7~8歳の時点と15~16歳に達した時点で被験者を評価した。

 8歳の時点では言語能力、学業成績、行動を評価するように親と教師に依頼。教師は、読み書きと算数の能力に問題があるか否かを報告し、小児の学業成績を平均以下、平均、平均以上のいずれかで評価した。

 また、15~16歳の思春期に達した時点では、親と本人が質問票に記入した。本人は自分の成績を同級生と比べて評価し、親は注意欠陥多動性障害(ADHD)の症状を発見するために広く用いられている質問票を使用して子供の行動を評価した。

16歳時のADHD重症度が高い

 その結果、8歳の時点で両手利きの子供では、右利きの子供と比べて言語障害を呈し、学業成績が劣る確率が2倍高いことが分かった。

 両手利きの子供が16歳に達すると、ADHDの症状を示す危険性が倍増することも明らかになった。さらに、両手利きの青少年の場合、右利きの青少年よりもADHDの症状の重症度が高い可能性が認められた。ADHDは学齢期の子供と青年の3~9%が罹患していると推定されている。

 また、今回の研究から、両手利きの青少年は、右利きまたは左利きの青少年と比べて、言語障害を有する割合が多いことが分かった。この結果は、両手利きと失読症との関連性を示した過去の研究結果と一致している。

 両手利きになる理由についてはほとんど知られていないが、利き手は脳の半球と関連していることが分かっている。これまでの研究から、生まれつき右手を使うのが得意な人は、脳の左半球が優勢であることが示されている。

 一部の研究では、両手利きでは大多数の人に見られる脳の半球の優勢パターンとは異なっていることが示唆されている。両手利きの場合、どちらかの半球がはっきりと優勢であることはない。ADHDは脳の右半球の機能低下と関連していることを示す研究が存在するが、これまでの研究結果から、今回の研究で両手利きの子供の一部がADHD症状を呈した理由が説明できる。

脳の違いの解明が必要

 Rodriguez氏は、今回の研究結果を受けて「両手利きは興味深いテーマ。大部分の人は主に一方の手を使うのに、なぜ一部の人は両手を使うことを好むのか不明だ。今回の研究から、両手利きの子供の一部は右利きまたは左利きの子供と比べて学業に困難を感じやすいという興味深い結果が得られた。このような困難がなぜ生じるのかを理解するには、脳の違いを解明することが重要で、そのためにさらなる研究が必要だ」と指摘した。

 さらに「両手利きは非常にまれな状態であるため、対象とすることができる両手利きの子供の数は比較的少ないが、今回の研究では統計学的にも臨床的にも有意な結果が得られた。しかし、この研究結果は、両手利きの子供が必ずしも学業の問題やADHDを呈することを示すものではない。確かに、両手利きの子供と青年では特定の問題を呈する可能性が高いことが分かった。とはいえ、われわれが追跡した両手利きの子供の多くは問題を全く示さなかったことを強調したい」と述べている。

 今回の研究結果は、特定の問題が発生するリスクが特に高い小児を教師や医療専門家が見分けるために有用となるだろう。

 Medical Tribune紙 2010年3月11日号 掲載

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