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前ぶれなく突然記憶が消える「一過性全健忘」

 2011年08月24日 11:04

 「一過性全健忘」は、ある日突然、何の前触れもなく数時間前からの記憶がなくなってしまう病気で、24時間以内に正常に戻る。日本大学医学部神経内科の大石実教授は「発作が治まった後でも、原因をはっきりさせるために神経内科の受診を勧めます」と助言する。

発作は1~8時間が多い

 40~80歳に発症することが多い一過性全健忘。自分の名前や家族の名前などは覚えているが、急に数時間前からの記憶を失ってしまう。例えば、運転中に自分がどこに行くのか分からなくなる。この場合、運転のやり方は分かるが目的地を忘れている。

 発作中は、自分が何をしているのか分からないため、周囲の人にしつこく同じような質問を繰り返す。そのため、家族や身近な人が異常に気付くケースが多い。

 発作は1~8時間続くことが多いが、頻度は1回がほとんどで、再発する割合は約10%と少ない。大石教授は「記憶以外の脳機能障害や意識障害はなく、手足に麻痺(まひ)が起こるようなこともありません。しかし、正常に戻っても発作中の出来事は全く覚えていないのです」と説明する。

特別な治療は不要

 原因は不明だが、脳の記憶に関係する「海馬」の機能が一時的に低下するために発症すると考えられている。心理的なストレス、激しい運動などが誘因となることもあり、大動脈解離(大動脈の膜が剥がれ激痛を伴う病気)などと合併することもある。

 一過性全健忘の場合、磁気共鳴画像診断装置(MRI)による検査で海馬に異常が見つかることが多い。また、脳波の検査を行い、てんかんなどの他の病気と見分ける。ヒステリー、頭部外傷、低血糖、中毒、椎骨脳底動脈循環不全(脳への血流量が少なくなる病気)などでも似たような症状が出ることがあるので、これらの病気を見分けることは重要だ。

 一般的に、症状が出てもすぐに良くなるため、経過観察を行い、特別な治療は不要。再発はまれだが、再発した場合には内頸(けい)静脈弁不全などの可能性も考えられるという。

 大石教授は「一時的な症状のため、一度治ればそれほど心配する必要はありません。しかし、てんかんなど似たような症状が出る病気もあるので、病院で検査をする必要があります」と話している。

(編集部)

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