メニューを開く 検索

トップ »  疾患・健康ニュース「あなたの健康百科」 »  ガスレンジによる調理が肺がんの原因に?

疾患・健康ニュース「あなたの健康百科」一覧

ガスレンジによる調理が肺がんの原因に?

 2011年09月02日 17:13

 肉を焼く煙や香りはしばしば食欲を増進させるものの1つに例えられるが,料理人など職業的に曝露(ばくろ)を受けている人にとっては、健康を害する可能性があるようだ。ノルウェー科学工科大学のAnn Kristin Sjaastad氏らは,肉を焼く際に出る煙に含まれるナフタレンなどの大気汚染物質が、電気調理器よりもガスレンジで多く検出されたとの報告を、英医学誌「Occupational & Environmental Medicine」(2010; 67: 228-232)に発表した。ナフタレンは肺がんの原因になることが指摘されているという。

2種類の油と調理法で比較

 Sjaastad氏らによると,食材を焼く時に多く見られる調理時の煙が変異原性(遺伝子の変化を引き起こす性質)や発がん性を有し,肺がんの原因になることが指摘されているという。特に、高温の油を使った調理から排出される煙については,数年前に国際がん研究機関(IARC)が「ヒトに対する発がん性の可能性あり」と分類している。

 調理時の煙には、ナフタレンなどの多環芳香族炭化水素 (PAH)のほか,動物性タンパク質の焦げに含まれるヘテロサイクリックアミン(HCA)や、添加物である高級アルデヒド類などが含まれている。

 同氏らは典型的な西洋料理店の厨房を実験室に再現し,ステーキ用の牛肉400グラムを17切れ用いて、電気調理器もしくはガスレンジでそれぞれ15分間の調理を行った。牛肉は市中の店で購入したマーガリンもしくは大豆油で焼いた。

 大豆油は2つの異なるメーカーのものを用いたほか,マーガリンには大豆,菜種,ココナツ油,やし油,ビタミンAおよびDが含まれ,硬化油(トランス脂肪酸を含むことが多い)ではないものが使用された。

防虫剤に続くナフタレン曝露の主因か

 調理する人に取り付けたフィルターのPAH濃度を調査したところ,ナフタレンが17切れ中16切れのサンプル調理で,空間1立方メートル当たり0.15~0.27マイクログラム検出された。同氏らによると、ガスレンジを使ってマーガリンで焼いた場合に最も高濃度を記録したという。

 また,全検体の調理で高級アルデヒドが検出されたほか,より毒性の強いアルデヒドもほとんどのサンプルで見られた。アルデヒド濃度は検出限界以下から空間1立方メートル当たり61.80マイクログラムの幅で,最も高濃度となったのは,油の種類にかかわらずガスレンジによる調理だった。

 同氏らは電気調理器で生じる煙の粒子サイズが80~100ナノメートルなのに対し,ガスレンジ調理で生じる粒子が40~60ナノメートルと極めて微細で,肺に吸収されやすいと解説。ガスによる炎が高温であることや、ガスの炎そのものによる影響も考えられるとしている。

 今回実験で検出されたPAH濃度は環境基準よりかなり低い(ノルウェーでの基準は空間1立方メートル当たり40マイクログラム)と同氏ら。しかし,ナフタレンを含む防虫剤の使用が禁止されている現在,調理時の煙がナフタレン曝露の新たな原因となりうるとし「可能な限り調理時の煙を減少させるべき」と警告している。

(MT Pro 2010年2月18日 掲載)

ワンクリックアンケート

大阪万博まであと1年

トップ »  疾患・健康ニュース「あなたの健康百科」 »  ガスレンジによる調理が肺がんの原因に?