渡辺徹さんインタビュー（心臓病・糖尿病との闘い）（2）
2012年11月05日 10:02
――仕事を休んだ後はいかがでしたか？
持病の糖尿病も原因だと思ったんですが、この3年は血糖値のコントロールもうまくいっていたので、「糖尿病患者は疲れやすいというし、年齢的にもやっぱり疲れが出る頃なんだろう」と、素人判断で家で休んでいただけでした。
でも、これが一向に良くならない。妻から「お医者さん行けば？ 行けば？」と言われながらも、「大丈夫だろう、疲れなんだから」と。そんな状態で1週間くらい過ごしていたんです。
そのうち、人生初の体験なんですが...食欲がなくなったんです！ 自分の中では衝撃的な出来事で（笑）、今までどんなに高熱が出ても食欲がなくなったことはなかったんですよ。
体調が悪いのに栄養を取らないのはいけないと思い、近所のクリニックにジャージとサンダル姿で栄養補給のための点滴を受けに行きました。他は一切、診ないでほしいと条件を付けて。ところが、そのお医者さんに「あまりに顔色が悪いから、胸の音くらい聞かせて下さい」と言われて、「胸だけですよ～」なんて答えながら診てもらったところ、「渡辺さん、これは私からのお願いです。大きな病院に連絡を取るから、そちらに行ってきちんとした検査を受けてくれませんか」と、半ば強制的にその足で大きな病院に行くことになりました。
そこでレントゲンとCT（コンピューター断層撮影）の検査を受けたのですが、そこで言われたのは「心臓が肥大して動きが鈍くなっています。処置をすぐにしないといけないから、大学病院に行ってください」。近所に出掛けるつもりのジャージとサンダル姿、大きい病院に行くのだって恥ずかしかったんですよ。なので、明日にでも行きますと言ったら、「ダメです！ 今すぐ行って下さい」「ここに救急車を呼びます、そういう状態です」と言われてしまいました。
次に行った大学病院では、救命救急センターに連れて行かれました。そこでエコー（超音波）検査を受けると、やはり心臓が肥大しているとのこと。血管が詰まっているようだったので、カテーテル（静脈から体の内部に入れる細い管）による検査を受けました。カテーテルでそのまま詰まっている部分を取っちゃうこともあるそうなんですが、検査を始めてみたら「無理です。ここでやめます」「冠動脈の一部が完全に詰まっています」と言われました。疲れのせいだと思っていたのに心臓病だなんて、本当にびっくりしました。
――大変危険な状態でしたね。
検査をしてくれた医師が言うには、急に詰まったのではなく長い時間をかけて詰まったので、毛細血管が新たにいくつもできて冠動脈の代わりに心臓へ血液を辛うじて送ってくれていたそうです。だからもう、この心臓の毛細血管には足を向けて寝られません（笑）。
とはいえ、毛細血管だけでは心臓への血液量が足りず、心臓の動きが鈍くなっていていつ止まってもおかしくない限界の状態、いわゆる心筋梗塞だったんです。
そんな状態で何年も仕事していたわけで、血の巡りが鈍いから徐々に徐々に疲れがひどくなっていたんですね。肥大した心臓が圧迫されて、10メートル歩いただけでも100メートルをダッシュしたくらいの負担になるそうです。そりゃ、階段を登れないですよね。
また、横になって眠れない日々が続いていたんですが、これも心臓病の特徴だそうです。横になっても苦しくて起き上っちゃう。どの方向を向いてもだめで、座ったまま寝る、座った状態でしか眠れないんです。それと、吐き気も特徴的な症状だそうですよ。
――根性の問題じゃなかった...。
根性の問題で片付けちゃいけなかったんです（笑）。本当にギリギリ、それこそ倒れる直前でした。それで冠動脈バイパス手術を受けるといったん決まったのですが、準備のために検査をしている中で、ある医師から「知り合いにカテーテル療法の世界的権威がいるのですが、会ってみませんか」と言われたんです。試しに、大学病院の外出許可を取ってその先生を受診したところ、カテーテル療法でもできますよと言われました。
別にバイパス手術がいけないわけじゃないんですが、術後の状況が違ってきちゃう、かかる時間が全然違う、仕事の復帰も違ってくると聞かされていたので、カテーテル療法を希望してもう一度転院しました。
ここまで、自宅をジャージとサンダル姿で出てから一度も帰らず。びっくりですよ。近所に出掛けたつもりが、クリニック、病院、大学病院、さらに転院して違う大学病院まで行ってしまったんですから。
