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叶和貴子さんインタビュー(関節リウマチとの闘い)(4)

 2012年12月10日 15:03

――復帰の際、休養の理由が関節リウマチだったことを公表されましたね

 はい。全国から驚くほど多くの反響が寄せられたんですが、3年間ひっそりと過ごしていたので、心理的な反動も大きかった。芸能人がメディアで自分の病気の体験談を語ると、図らずも患者さんを代表する存在、メッセンジャーになってしまいます。私個人の体験を語るにしても、「私よりもつらい状態の人もいるのに、まるで自分だけが酷いと受け取られる話し方になっていないだろうか」「発症して間もない人が私の話を聞いて、『自分もそんなふうになってしまうのでは』と不安を煽ることにならないだろうか」...今度はそんな悩みと葛藤を抱えるようになったんです。その重荷に耐えかねて、自分の体験を話せなくなった時期もありました。

 それでも、葛藤を重ねる中で「自分の話を聞いた人がどう受け止めて、何を言われてもいいや」という、"諦めと潔さ"が大事だという境地に至りました。

 もちろん、最初から諦めてはいけませんが、最後まで諦めないのは苦しいものです。ある程度のところまで至ったら、どこか自分の中で、この辺でよいのではないか、この辺りで現状を受け入れてどう自分らしく生きていくかを考えよう、といった"諦め"の発想も必要だと思うんです。"諦める"とは「明らかに見極める」こと、真理を悟り、道理を明らかにすることなのだと、ある時その語源を聞いて、そうだ、まさにそれだと思いました。

 私は治療薬を選ぶときに慎重過ぎて、いくら良く効く薬と言われても即座に試してみようと思えないので、お医者さんから見るととても歯がゆい患者だったと思います。とはいえ、さまざまな治療法から何を選ぶかは、究極的には個々人の問題に尽きるのではないでしょうか。選ぶのは自分、その結果を受け入れるのも自分、という気持ち。病気と一生付き合っていく上では、そういう心構えが必要なんでしょうね。

 そうは言ってもつらい時もありますし、嘆くこともあります。そんな時は、ちょっとだけおいしいワインを飲むなど、自分に少しだけご褒美を上げるようにしています。仕事を再開した頃に、犬を飼い始めました。ヨークシャーテリアで、名前は「ポロ」。まだ生まれたばかりの子犬の状態からなので、この子を育てるためにもしっかりしなければ! と気持ちに張り合いができました。お散歩仲間ができて外出が楽しくなりましたし、良いリハビリになっています。ポロは私にとって家族であり仲間であり癒しであり...かけがえのない存在です。

――新たに関節リウマチにかかった人やその家族に伝えたいことは?

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 私のリウマチ歴は、今では20年ほどになりました。以前と違って非常に効果の高いお薬がありますし、お医者さんも本当によく話を聞き、説明をしてくださいます。一人で悩まないで、相談できて頼れるお医者さんを見つけて、先生とよくお話しをして早く治療を始めることをお勧めしたいと思います。

 私は、まさに病気が燃え盛っている時期に病院に行かなかったり、薬を飲むのをやめてしまったりと紆余(うよ)曲折しましたが、今では何でも相談できるお医者さんと一緒に、自分に合った治療を進めています。

 それから、自分で言うのもおかしいのですが、リウマチ患者さんは頑張り過ぎてしまう人が多いようです。薬でちょっと楽になったらつい動き過ぎてしまって、かえって悪化を引き起こすなんてことがよくあります。無理をしてはいけない体であることを念頭に置いて、自分の体と対話することを心掛けてください。

 患者さんを取り巻くご家族の方々は、できる限り診察に立ち会ってください。患者さんご自身の口から説明されたときにはピンとこなかったけれど、先生からの説明を聞いて初めて理解できた、ということもあるようです。一緒に聞いてフォローすることも大事。家族の理解がないとつい頑張って悪化してしまうケースもあります。お医者さんからの説明を聞いて、家族でサポートしていってください。

 頑張り過ぎてしまう関節リウマチ患者さんですから、「頑張って」という言葉がけは適切ではありません。私はあるとき、「ゆっくりね」と言葉をかけてもらってすごく救われた気持ちになりました。その言葉をかけてくださった方は舞台女優なんですが、お母様がリウマチ患者なのだそうです。理解があるからこその言葉だと思います。

 私は関節リウマチであることを話したおかげで、同じ痛みと悩みを抱えるリウマチ患者さんたちに出会えました。日本リウマチ友の会の会員でもあります。痛みは抱えている人にしかどうしても分かり得ない部分がありますから、自分の悩みやつらさを気兼ねなく話せたり、理解し合えたりできる人がいることは大きな心の支えとなりますし、いろんなアドバイスも受けられます。

(取材:長谷川愛子/撮影:大倉英揮)

叶 和貴子(かのう わきこ)

 1956年、北海道生まれ。77年の短大卒業後、バックコーラスとして芸能界に入り、女優としては80年放送のテレビドラマ「源氏物語」(TBS系)でデビューした。テレビドラマのほか、映画、舞台、ラジオ、CMなどに出演し、歌手としても活躍していたが、91年に関節リウマチを発症、病状の悪化に伴い97年に芸能活動を休止した。00年に活動を再開し、現在は講演会やトーク番組を中心に活躍している。

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