「全ての人がワクチンを2回受けること。それに尽きる」

　今回のイベントは、厚労省の麻疹（はしか）対策を話し合う専門家会議の一環として行われた。麻疹と風疹（三日ばしか）の混合ワクチン（MRワクチン）は2回受けることが重要で、現在は1歳（1期）と5歳（2期）のほか、中学1年生相当年齢（3期）と高校3年生相当年齢（4期）を対象に定期接種が行われている。しかし、3期と4期は今年3月までの時限措置で、来年度から定期接種の対象は1期と2期のみに戻ってしまう。

　3期と4期の時限措置が開始された当初、麻疹の発生をゼロにする「排除」の目標を2012年度末に設定していた。だが、期限が目前に迫った2012年3月上旬現在も、麻疹の報告はゼロになっていない。3期と4期の時限措置終了を受け、国は国内での麻疹排除目標を新たに2016年度と設定。予防指針の改正も行い、引き続き対策を推進する意向を示した。

　イベントではまず、秋葉副大臣が「麻疹は発症すると、肺炎、中耳炎を合併しやすく、1,000人に1人が脳炎を発症するといわれています。その死亡率は（医療条件の良い）先進国でも1,000人に1人という重大な病気」と説明。2008年からの3期、4期追加接種を含むMRワクチン2回接種率の上昇に向けた取り組みで、2012年までに麻疹患者の報告数が97％減少したことなどを紹介した。

　石田さんと東尾さんは、それぞれ「今、長男は4カ月なんですが、1歳になったらMRワクチンを受けさせたいと思います」（石田さん）、「予防接種を受けているときは、注射で泣いてしまうので本当かわいそうだなと思ってしまうんですけれども、もっと先の大きな病気から守るという意味では大切かなと思います。これからもぜひ、1歳でMRワクチンを受けて予防していければと思います」（東尾さん）とコメント。

　専門家会議の座長を務める国立成育医療研究センターの加藤達夫名誉総長は「全ての方が定期接種でMRワクチンを2回受けること。忘れるなどして（定期接種対象の期間を）過ぎた方もワクチンを受けること。それに尽きます」と呼び掛けた。

　イベント後に行われた会議では、麻疹の重篤な合併症の一つ「亜急性硬化性全脳炎（SSPE）」の患者会「SSPE青空の会」の畑秀二副会長が「麻疹ウイルスが社会からなくなれば、SSPEはなくなります。自分の子供がかからなくするためではなく、社会からウイルスをなくすことが重要。予防接種を行い、自分が他人への感染の媒介とならないようにする意義があります」と、予防接種の社会的意義をあらためて訴えた。

石田夫妻が選ばれた本当の理由...加藤座長が逆取材？

　「数ある有名人の中で、なぜご両人が選ばれたのか。委員として非常に疑問というか、不思議なのですが、このからくりを誰か知っている人いますか、厚労省」―多くの人が感じたであろう率直な疑問をイベントでぶつけたのは、取材に集まったメディアではなく、座長の加藤氏。

　イベントの司会進行に当たっていた秋葉副大臣が、すかさず「おそらくお子さんをちょうど出産されて、これからワクチンの適齢期を迎える。その接種を契機に皆さんにアピールできればという狙いがあるのではないか」と事務局に代わり答弁した。

　そんな"想定内"の回答を「そういう狙いもあるかと思いますが」と受けた加藤氏。「実は？ 正林課長、起立」と厚労省健康局結核感染症課の正林督章課長を直接指名。「実は、石田さんが私の高校の野球部の先輩でして...」と告白させられるシーンもあった。

　イベントには石田夫妻を取材しようと多数のテレビカメラが並んだが、質問は「抱負をお願いします」の1件のみ。ワクチンで防げる病気（VPD)への社会的関心を高める難しさが垣間見えた。また、秋葉副大臣と加藤氏のやりとりも、「はしかと麻しんはどう違うんでしょうか」（秋葉副大臣）、「はしかは一般用語、麻疹は医学用語です」（加藤氏）、「なぜ（MRワクチン）2回接種が必要なのでしょうか」（秋葉副大臣）、「先ほど副大臣が（メディアに）説明されたように、1回では不十分だからです」（加藤氏）と、若干かみ合わない場面も見られた。

（編集部）