握手の代わりに"グータッチ"を、感染拡大防ぐ―英研究
2014年08月04日 17:00
欧米では、あいさつの際に握手や抱擁をするのが一般的。でもこの行為が、病原菌を広げているとしたら―。英アベリストウィス大学のSara Mela氏らは、握手の代わりに握った拳同士を突き合わせるいわゆる"グータッチ"(フィストバンプ=fist bump)であいさつをすることで、病原菌の拡大が防げる可能性があると、米医学誌「American Journal of Infection Control」の8月号(2014; 42: 916-917)に発表した。"ハイタッチ"(ハイファイブ=high five)も減らしたが、グータッチの方がより効果的だったという。衛生面から見た握手禁止は、今年6月に米国の研究者も提言している(「JAMA」2014; 311: 2477-2478)。
オバマ大統領やダライ・ラマもグータッチ
Mela氏らは、パソコンのキーボードやドアノブなどから細菌やウイルスが人の手から人の手へ伝わる危険性があるが、握手のように直接触れる場合のリスクはそれ以上としている。握手のほかに、欧米の若者の間ではハイタッチ(ハイファイブ=high five)やグータッチがあいさつの方法として浸透しているが、これら接触方法の違いで病原菌の広がり方に差があるのかを調査した。
なお、日本ではプロ野球・巨人の原辰徳監督で知名度が上がったグータッチだが、Mela氏らは、バラク・オバマ米大統領やチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世らが公式の場でグータッチを行っていることを紹介し、「今や若者だけのあいさつではない」としている。
病原菌がハイタッチで半数、グータッチで9割減
Mela氏らの実験は、以下の方法で行われた。滅菌手袋を着けた手を非病原性大腸菌の培養液(1ミリリットル当たり24億個)に浸し、乾燥。滅菌手袋を着けた別の人と握手、ハイタッチ、グータッチのいずれかをした後、別の人の手袋を緩衝液(水素イオン指数=pHが安定している液体)に浸し、液の中の細菌数を測定。
その結果、大腸菌がうつる数は、握手の平均1億2,400万個に比べ、ハイタッチで半数以下、グータッチでは9割以上少なかった。
また、手と手が接触する時間を握手に合わせて3秒にすると、ハイタッチではそれほど増えなかったものの、グータッチでは顕著に増加。しかし、依然として大腸菌がうつる数は、握手>ハイタッチ>グータッチで変わらなかった。なお、握手の握りを強くすると、通常の握手よりも大腸菌がうつる数が2倍近く増えることも分かった。
今回は非病原性大腸菌を使って実験したが、Mela氏らはウイルスを含む他の病原起因でも結果は同じと推定。衛生面から見て、握手に代わるあいさつとしてグータッチが広まっていくことが望ましいと結論している。
(編集部)