花粉症薬の飲み過ぎで認知症に? 米研究が指摘
2015年02月24日 10:30
米ワシントン大学薬学部のシェリー・グレイ氏らは、抗コリン作用がある薬を服用する量が多いと、認知症になる可能性が固まることを、1月26日発行の米医学誌「JAMA Internal Medicine」(電子版)に報告した。抗コリン作用が強い薬は、花粉症などアレルギー性鼻炎や乗り物酔い止めに使われる第1世代抗ヒスタミン薬、抗うつ薬(三環系)、胃腸薬(スコポラミン)、睡眠薬(ベンゾジアゼピン系)などが挙げられる。
3年分超える用量でリスク1.5倍
グレイ氏らは,同大学のあるワシントン州シアトルの住民を調べた研究の参加者から、認知機能が低下していない65歳以上の男女3,434人を選んで調査。7年後(中央値)には全体の23.2%に当たる797人が認知症にかかり、その8割(637人)がアルツハイマー病だった。
薬局のデータベースを活用して調べた結果、抗コリン作用のある薬を10年間服用していたことと、アルツハイマー病を含む認知症との間には明らかな関連が見られ、服用量が多いほど影響は強くなった。
標準用量の3年分に相当する1,095単位を超えて服用した場合、服用しなかった人に比べて認知症になる危険性が1.54倍に上昇。服用をやめても数年間はリスクが高まったままだったという。
脳剖検でさらに詳細な検討へ
今回の検討で多く使われていたのは、三環系抗うつ薬(doxepin=日本未認可=など),第一世代抗ヒスタミン薬(クロルフェニラミンなど),過活動膀胱(ぼうこう)の治療などに使われるムスカリン受容体拮抗薬(オキシブチニン)など。なお現在は、うつ病の治療は「SSRI」や「SNRI」と呼ばれる薬、花粉症などアレルギー性鼻炎の薬は第二世代抗ヒスタミン薬が中心。ただし、市販されているアレルギー性鼻炎薬は第一世代抗ヒスタミン薬も少なくない。
抗コリン作用のある薬の一部が認知機能の低下の原因になることが知られていたが,認知症との関連を示した検討は今回が初めてとなる。
グレイ氏らは「今回の検討により、抗コリン作用のある薬の用量が増えると認知症の危険性が高まるだけでなく,服用をやめた後も数年にわたって認知症リスクが残る可能性が分かった」と結論。同意している一部の参加者に死後の脳剖検を行うことを予定しており、「両者の関連について、より詳しいことが明らかになるだろう」としている。
(編集部)