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抗菌ハンドソープ、販売禁止へ―米国

 2016年09月08日 06:00

 風邪やインフルエンザといった感染症は、手を介して口から感染する「接触感染」が、主な感染経路の1つだ。そのため、感染症の予防には手洗いが欠かせない。ドラッグストアに並ぶ手洗い用せっけんは種類が豊富で、選ぶのに迷うほどだ。そんな手洗い用せっけんに関して、米食品医薬品局(FDA)は9月2日、声明を発表した。抗菌作用があるとして一般向けに販売されているせっけんやハンドソープなどのうち、トリクロサンやトリクロカルバンなど19種類の殺菌剤が含まれる製品の販売を禁止するという。詳細は、FDAのホームページに掲載されている。なお、トリクロサンなどが配合された薬用せっけんや抗菌ハンドソープは、国内でも販売されている。

「通常のせっけんと流水で手洗い」がベスト

 FDAは2013年12月、殺菌剤が含まれるせっけんの規制案を発表した。これは、トリクロサンやトリクロカルバンなどの殺菌剤を含むせっけんを長期間使うと、抗菌薬が効かない菌(耐性菌)が発生したり、甲状腺ホルモンや生殖ホルモンに悪影響を及ぼしたりする可能性があるとの研究報告を受けたものだ。

 殺菌剤が含まれている一般向けのせっけんやボディーソープなどの製品を販売する企業に対し、FDAは安全性と有効性の追加データを提出するよう求めていた。提出されたデータを検証したところ、これらの製品が通常のせっけんに比べ感染症の予防効果を発揮することを証明できなかったという。

 今回の声明では、販売企業に対して1年以内に指定の成分が含まれる製品の販売を中止するか、同成分が含まれない製品に切り替えて販売することが求められている。

 最終的に販売の中止が決定されたのは、トリクロサンやトリクロカルバンの他、クロフルカルバン(ハロカルバン), フルオロサラン、ヘキサクロロフェン、ヘキシルレゾルシノール、ヨウ素含有化合物など、19種類の殺菌剤が含まれる一般向けのせっけんやハンドソープなどの製品。挙げられた19種類の殺菌剤は、国内でも一部のハンドソープやせっけん、マウスウォッシュなどに配合されている。
 ただし、一般向けの手指の除菌用ローションやジェル、手ふき用ウェットティッシュ、医療機関で使われているせっけんやハンドソープは規制の対象外となっているようだ。

 なお、2013年に規制案が発表されたのを受け、米国では既に一部の企業がこれらの殺菌剤の使用を中止している。また、規制案で検証すべき成分として挙げられていた塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロロキシレノールの3種類については、安全性と有効性のデータの提出期限を1年間延期。データ収集期間中は、これらの成分が含まれる製品の販売は許可されるという。

 今回の規制に関し、FDA医薬品評価研究センター(CDER)のディレクターを務めるジャネット・ウッドコック氏は、「抗菌作用があるとされる石けんやハンドソープを使っている人は、細菌などの感染を予防する効果を期待しているかもしれない。しかし、通常のせっけんと流水で手を洗うよりも優れているとの科学的根拠は全くない。それどころか、これらの成分は長期的には、有害な作用をもたらす可能性を示すデータがある」とコメント。
 また、FDAは「通常のせっけんと流水で手を洗うことは、自分自身の感染予防に加え、他者への拡散防止にもなる。せっけんと流水が利用できず、除菌用ローションを代用する場合には、アルコールの含有量が60%以上のものを使うことが、米疾病管理センター(CDC)では推奨されている」としている。

(あなたの健康百科)

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