少量の飲酒で顔が赤くなる人は特に発症リスクが高いといわれる食道がん。その仕組みを動物実験で解明した京都大医学部付属病院腫瘍内科の武藤学教授に予防法などについて聞いた。 ▽毒性強い発がん物質 アルコールが肝臓で分解されてできるアセトアルデヒドは、毒性の強い発がん物質だ。アセトアルデヒドは通常、ALDH2という酵素によって無害な酢酸と水に分解される。また、アセトアルデヒドによって食道粘膜のDNAが傷ついても、がん抑制遺伝子であるTP53などがそれを修復する。 日本人を含むアジア人の3~4割は遺伝子変異で生まれつきALDH2の働きが弱く、飲酒するとアセトアルデヒドの影響で顔や体が紅潮したり、頭痛や吐き気がしたりする。ALDH2の機能が低い人は長期にわたる飲酒によって食道がんの発症リスクが高まるだけでなく、食道内に多発することが以前から知られていたが、メカニズムは不明だった。 武藤教授らは動物実験で、ALDH2の機能が低いと、飲酒とTP53の変異の組み合わせによって、将来がんになる可能性が高い前がん病変と食道がんが多発することを突き止めた。 人間でも「飲酒によって食道粘膜に将来がんになるリスクの高い前がん病変ができやすくなり、禁酒すれば前がん病変は改善し、食道がんの抑制につながると考えられます」と武藤教授は説明する。 ▽「飲酒の効用」に疑問 厚生労働省は「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」で、少しでも飲酒すると食道がんの発生リスクが高まるとのデータを示している。以前は、「酒は百薬の長」とされていたが、今では間違い。飲酒を習慣にしている人は食道がんに注意が必要だ。 ALDH2の機能が低い人の中には飲酒しても顔や体が赤くならない人もいて、無自覚のままアセトアルデヒドが大量に蓄積される可能性がある。武藤教授らは体内に産生されるアセトアルデヒドを呼気で簡便に測定できる機器を開発中で、食道がん高リスク者を健診などで見つけ出す手段として期待されている。 「日本人の食道がんの予後(病気の経過や見通し)はアジアの他の国と比べて良好で、その理由として内視鏡による早期診断・治療が進んでいる点が挙げられます。早期発見のために定期的に健診を受けることをお勧めします」と武藤教授は話している。(メディカルトリビューン=時事) ◇ ◇ 京都大医学部付属病院の所在地 〒606―8507 京都市左京区聖護院川原町54 電話075(751)3111(代)