あなたの健康百科

風邪に抗菌薬は無用―増える耐性菌

  • Facebookでシェアする
  • Medical Tribune公式X Xでシェアする
  • Lineでシェアする

 抗菌薬(抗生物質)が効かない薬剤耐性菌が深刻な問題となっている。耐性菌による感染症は治療の選択肢を狭め、重症化の恐れもある。国立国際医療センター(東京都新宿区)AMR臨床リファレンスセンターの佐々木秀悟主任研究員に聞いた。

▽希薄な認識

 風邪は鼻水、喉の痛み、せきを伴う感染症で、大半はウイルスが原因だ。ウイルスと細菌は異なる病原体であり、細菌感染症の治療に用いる抗菌薬は風邪には効果がない。風邪の治療は、解熱鎮痛薬、鼻水を抑える抗ヒスタミン薬などで症状を和らげ、休養するのが基本となる。

 「薬剤耐性菌の出現には、抗菌薬の不適切使用が大きく影響しています」と佐々木主任研究員は指摘する。同センターが昨年実施したインターネット調査では、「抗菌薬」という言葉を聞いたことがある人は89.1%に上ったが、「抗菌薬は風邪に効かない」「抗菌薬はウイルスに効かない」と正しく理解している人はそれぞれ25.9%、16.0%にとどまった。欧州連合(EU)諸国などに比べても低く、国は教育、啓発を急いでいる。

▽薬は指示通りに飲む

 体内には多様な細菌が存在し、抗菌薬を使用すると病原菌だけでなく無害な細菌も減少する。生き残った細菌が薬剤耐性を獲得することがある。風邪で不要な抗菌薬を服用すれば、耐性を持つ細菌が出現しやすくなる。代表的な薬剤耐性菌には、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)、フルオロキノロン耐性大腸菌などがある。

 薬剤耐性菌による感染症を発症すると、通常の抗菌薬が効きにくいため治療が困難になり、重症化して命に関わる危険もある。日本では、主な薬剤耐性菌であるMRSA、フルオロキノロン耐性大腸菌による菌血症だけでも年間8000人以上が死亡していると推計されている。

 医療機関では、風邪であっても患者や家族が強く希望すると抗菌薬を処方するケースがあるが、「不必要な抗菌薬を求めないことが重要」。

 「細菌感染症の治療のため処方された抗菌薬は、症状が改善しても自己判断で中止したり量を減らしたりせず、指示通りに飲むことが大切です。薬剤耐性菌の出現を防ぐポイントは抗菌薬の適正使用。そして手洗い、マスク着用、ワクチン接種など基本的な感染対策です」と佐々木主任研究員は話している。(メディカルトリビューン=時事)

   ◇   ◇

 国立国際医療センターの所在地 〒162―8655 東京都新宿区戸山1の21の1 電話03(3202)7181(代)

  • Facebookでシェアする
  • Medical Tribune公式X Xでシェアする
  • Lineでシェアする