心臓手術後のせん妄リスクが低い鎮痛薬は?

フェンタニル、モルヒネ、ヒドロモルフォンで比較

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 術後せん妄(POD)は心臓手術後に高頻度(11.5~54.9%)で発生し、死亡リスク上昇および医療負担の大幅増加に関連する。術後の疼痛緩和にはオピオイドが用いられるが、PODの回避を視野に入れた術後オピオイドの至適選択に関するエビデンスは不足している。中国・Zhangzhou Traditional Chinese Medical HospitalのLifang Xiao氏らは、実臨床の集中治療室(ICU)データベースを用いて、心臓手術後のPOD発生率、死亡リスク、入院期間などをフェンタニル、モルヒネ、ヒドロモルフォンで比較したコホート研究の結果をSci Rep(2025年11月27日オンライン版)に報告した。(関連記事「フェンタニルによる鎮静法がせん妄と関連」)

傾向スコアマッチング後の各群701例で比較

オピオイドとPODの関連についての既報は、小規模かつ背景の均一化が成されておらず、結果が一貫していなかった。また、心臓手術後の患者を対象とした研究はほとんどなかった。

Xiao氏らは今回、米・Massachusetts Institute of Technology(MIT)が公開しているICUデータベースMedical Information Mart for Intensive Care IV(MIMIC-IV)のデータを用いたコホート研究を実施。心臓手術後24時間のICU滞在中にフェンタニル、モルヒネ、ヒドロモルフォンのいずれかをモルヒネ換算量で70%超投与された成人患者8,246例を同定。傾向スコアマッチング後の各群701例を解析対象として、POD発生率、死亡リスク、入院期間、28日間における昇圧薬および人工呼吸器の非使用日数を比較した。

主要評価項目としたPOD発生はCAM-ICUで評価し、多変量ロジスティック回帰を用いてオッズ比(OR)を算出した。

PODはヒドロモルフォンとモルヒネで有意に低下

傾向スコアマッチング後、3群間のベースライン背景は均一化された〔全て標準化平均差(SMD)0.1未満〕。

POD発生率はフェンタニル群の22.1%に対し、モルヒネ群で10.6%(OR 0.42、95%CI 0.31~0.56)、ヒドロモルフォン群で9.7%(同0.38、0.28~0.51)と有意に低かった(全てP<0.001)。

死亡リスクを見ると、フェンタニル群に比べてヒドロモルフォン群はICU死亡(2.0% vs. 0.1%、OR 0.07、95% CI 0.01~0.53)、院内死亡(2.3% vs. 0.6%、同0.25、0.08~0.74)とも有意に低かった(順にP=0.01、P=0.012)。モルヒネ群に有意な死亡リスクの低下は見られなかった。ただし、Xiao氏らは「全体で死亡例が52例と極めて少なく、慎重な解釈が必要」と断っている。

ヒドロモルフォン群、モルヒネ群ではICU滞在・入院期間が有意に短縮

フェンタニル群と比べ、ヒドロモルフォン群およびモルヒネ群では、28日間の人工呼吸器および昇圧薬使用日数、ICU滞在・入院期間がいずれも有意に短縮された(全てP<0.001)。

以上の結果と考察を踏まえ、Xiao氏らは「心臓手術後のヒドロモルフォン使用は、POD発生率の有意な低下、死亡リスク低減、入院期間短縮、28日以内の昇圧薬および人工呼吸器使用日数の短縮と関連していた。一方、モルヒネもPODリスク低下および入院期間短縮と関連していたが、死亡リスクの有意な低減は認められなかった」と結論している。

医学ライター・小路浩史

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