消化器外科周術期の栄養療法

栄養療法の多岐にわたる取り組みを提示

　本セッションでは9つの演題が報告される。図は、周術期の栄養状態と、各演題が取り上げる術前・術後長期における各フェーズの対応関係を示したものである。

　まず①については、術前の栄養不良と手術部位感染（SSI）発生率上昇の関連が指摘されている現状を踏まえ、高橋賢一氏が栄養スクリーニングツールのCONUT法による術前栄養評価とSSI発生率との関連を検討。②では、武田茂氏が術前・術後における免疫調整経腸栄養を用いた周術期経腸栄養療法の有効性について報告する。

　術後の食欲不振・消化管機能障害に伴う体重減少および低栄養状態は、QOLの著しい低下につながるケースが多い。そこで③に関し、中村公紀氏が漢方薬投与による食事摂取量増加効果について、サルコペニア進行予防の観点から報告する。

　④ではいまだ課題が多い術後長期の栄養投与方法として、小松周平氏が夜間の経腸栄養療法の有用性を示す。⑤では胃切除後症候群の代表的な症状の1つであるダンピング症候群と血糖変動との関連について、李基成氏が自施設での検討結果を発表する。

　さらに⑥については、木村豊氏が術後補助化学療法における成分栄養剤による栄養介入と治療完遂割合の関係を考察。⑦では低栄養患者における術式選択として、膵全摘を回避し尾側膵を少量温存する膵頭側亜全摘の有用性を中川勇希氏が報告する。

　⑧では曽山明彦氏が肝移植レシピエントにおける術後骨格筋量の経時的変化と回復に影響を及ぼす因子の探索結果について、⑨では林航輝氏が術前骨格筋量減少が長期予後成績に及ぼす影響について検討した知見を発表する。

　栄養療法は今後、低体重、サルコペニア、肝障害、高齢などのリスクを有する患者への重要な支持療法になると考えられている。また、栄養療法の成否は医師だけでなく、栄養士、看護師などが連携するチーム医療が鍵を握っている。司会の土岐祐一郎氏は「幅広い期間におよぶ栄養療法を画一化することは難しい」としつつも、「チームを構成する医師とメディカルスタッフの双方が、本セッションで発表される各施設の工夫や成績などを参考に、自施設での最善な介入方法を編み出してほしい」と呼びかけている。