JSH・AASLD Joint Symposium： 肝癌：サーベイランスと治療（JSH・AASLD Joint Symposium：Surveillance and treatment of hepatocellular carcinoma）

2020年11月06日 06:55

米国から3氏、日本から2氏が登壇

　このような背景のもと、日本肝臓学会（JSH）と米国肝臓病学会（AASLD）による初めての合同シンポジウムが企画された。本シンポジウム開催に当たり、JSHでは理事長の竹原徹郎氏らを中心に、昨年春からAASLDにアプローチ。AASLDは、これまで欧州肝臓学会（EASL)など多国連合学会とは相互連携があったものの、国単位の学会との連携は前例がなく、当初は難色を示していたという。しかし、熱心に提案を行った結果、AASLDとJSHの定期相互連携が決定した。

　記念すべき第1回となる本シンポジウムについて、司会の同氏は「国単位の学会と連携してこなかったAASLDの歴史を見ると今回の連携は異例だが、日本の肝疾患診療のレベルが高く評価されているということ。人口約3.3億人の米国から得られる大規模なデータとその解析は、日本では得難い貴重なものであり、規模の大きな話が聞けるのではないか。個人的には、脂肪肝やNASHのような患者数が多い対象からの肝がん高リスク群の拾い上げをどのように行っているかを注目している」とし、日本人演者の講演については「日本は肝疾患治療のレベルが高く、より臨床に即した内容となるだろう」と展望した。

　今回の米国人演者の選定は、連携における米国側の立役者でAASLDのBoard MemberであるRay Kim氏、Anna Suk-Fong Lok氏により行われ、Kim氏の他、Amit Singal氏、Renu Dhanasekaran氏が登壇、肝細胞がんサーベイランスにおけるピットフォールや課題などについて講演する。一方、日本からは工藤正俊氏、建石良介氏が登壇し、肝がん薬物治療の現状と展望、高リスク群からの肝がん患者の同定法についての講演が予定されている。

AASLD 2020でも合同シンポジウムを開催

　なお、JDDW 2020直後に開催されるAASLD 2020（11月13～16日、ウェブ）でも、JSHとAASLDの合同シンポジウムが開催される。こちらのテーマは「Lean（痩せた） NASH」とし、日本人に多いLean NASHの知見が紹介される予定だ。竹原氏は「発症機序や遺伝的背景、実態などの内容が含まれると聞いている。米国では肥満のNASH患者が多いため、Lean NASHに関するデータは少なく、今回のテーマに強い興味を示している」と話す。その上で、「JDDWに引き続き聴講することで、また違った理解が深まるのではないか。両学会の講演を聞くだけでなく、臨床に生かして発信することで相互連携を深める役割を担ってほしい」と期待を寄せている。