自閉症スペクトラムに心血管代謝障害リスク

システマチックレビューとメタ解析で関連を検証

2023年02月07日 17:13

　米・Texas Tech University Health Sciences CenterのChathurika S. Dhanasekara氏らは、自閉症スペクトラム障害（ASD）と心血管代謝障害（cardiometabolic disorders）との関連を検討するシステマチックレビューおよびメタ解析の結果をJAMA Pediatri（2023年 1月30日オンライン版）に報告。ASD患者では心血管代謝障害のリスクが高かったことから、臨床医は徴候を見逃さないようにすべきだと述べている。

34報・27万例以上のASD患者のデータを検討

　ASD患者では肥満リスクが高いことは確立されているが、ASDと血管代謝障害および肥満との関連についての決定的なエビデンスはまだない。

　Dhanasekara氏らはPubMed、Scopus、Web of Science、ProQuest、EMBASE、Ovidのデータベースに2022年7月31日分までに登録された論文を、発表日や言語にかかわらず検索。小児／成人のASD患者と対照群を含み心血管代謝障害の危険因子（糖尿病、高血圧、脂質異常症、動脈硬化性の大血管疾患）について報告した観察研究と介入試験のベースラインデータを抽出した。

　スクリーニングとデータ抽出、研究の質評価は2名以上の研究者が独立して行い、効果量の推定にはDerSimonian-Laird法を用いた。主要評価項目はASD患者における糖尿病、高血圧、脂質異常症、動脈硬化性大血管疾患の相対リスク（RR）とし、副次評価項目は1型糖尿病、2型糖尿病、心疾患、脳卒中、末梢静脈疾患のRR。

　解析対象となった研究は34報で、症例数は800万9,479例〔ASD患者27万6,173例、非ASD例773万3,306例、平均年齢は31.2歳（範囲3.8～72.8歳）、統合データの女性割合は47%（同0～66％）〕だった。

糖尿病、脂質異常症、心疾患リスクが上昇

　解析の結果、ASDと全ての糖尿病（RR 1.57、95%CI 1.23～2.01、P＜0.001、対象研究20報）、1型糖尿病（同1.64、1.06～2.54、P=0.03、6報）、2型糖尿病（2.47、1.30～4.70、P=0.006、3報）の発症リスク上昇との有意な関連が認められた。

　さらに脂質異常症（RR 1.69、95%CI 1.20～2.40、P=0.003、7報）、心疾患（同1.46、1.42～1.50、P＜0.001、3報）のリスク上昇とも関連したが、高血圧（同1.22、0.98～1.52、P=0.08、12報）と脳卒中（同1.19、0.63～2.24、P=0.592、４報）に有意な関連は見られなかった。

　しかしASD児に限ると、高血圧のリスクは年齢をマッチングした対照群と比べ、有意に高かった（RR 2.54、95%CI 1.56～4.12、P＜0.001、2報）。

研究間の異質性調整は不十分

　Dhanasekara氏らは、今回の研究の強みとしてロバスト（堅牢）な方法論、バイアスのリスクを軽減するため症例対照研究を除外、代謝パラメータはASD群と非ASD群（対照群）間で評価などを挙げている。

　一方、限界については、1型糖尿病と2型糖尿病を明確に区別していない研究が幾つかあったこと、心血管代謝障害の定義が統一されておらず最終解析から除外した研究が数報あったこと、併存疾患については自己／保護者に基づく研究が含まれており自己報告に関連した系統的バイアスが避けられないなどを指摘。解析対象とした研究の数が少なく、研究間の異質性 (between-study heterogeneity)について十分な検討と調整を行うことができなかったとしている。

　最後に、同氏らは「若年時に発症した心血管代謝障害は、医療上の懸念やニーズの増大をもたらすことから、臨床家はASD患者のさまざまな徴候を見逃さないように注意すべきだ。今後は、予防戦略の構築を目指した研究も必要であろう」と結んでいる。

（木本 治）