線維筋痛症、高気圧酸素治療の効果は？

システマチックレビューとメタ解析

2023年02月09日 05:00

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　慢性疼痛と全身性のこわばりを主徴とし、疲労感や抑うつ、睡眠障害などさまざまな症状を伴う線維筋痛症。原因が不明で根治療法はないため、症状に応じて疼痛治療薬などによる薬物治療や運動療法などが行われている。しかし、薬物治療ではしばしば副作用が問題となることから、効果的な非薬物療法が求められている。こうした中、中国・Sichuan UniversityのXinxin Chen氏らは線維筋痛症に対する非薬物療法の1つとして期待されている高気圧酸素治療（HBOT）の有効性と安全性を評価する目的で、システマチックレビューおよびメタ解析を実施。その結果をBMJ Open（2023; 13: e062322）に報告した。

抗炎症作用による症状緩和の可能性に着目

　線維筋痛症は全身の複数の部位に疼痛が持続、または再発する原因不明の慢性疾患である。疼痛以外にも疲労感や倦怠感、睡眠障害などさまざまな症状を伴う場合が多く、有病率は世界で2～8％と推定されている。治療選択肢には薬物治療の他、運動療法や瞑想運動（ヨガ、太極拳など）、認知行動療法などがあるが、鎮痛効果は限定的である。薬物療法は副作用を伴うことがあり、QOL低下やコンプライアンス低下を招くことも少なくない。

　こうした中、重篤な有害事象が少なく忍容性の高い新たな治療法として期待されているのが高気圧酸素治療である。同療法では、高い気圧によって血清内に多量の酸素（結合型酸素）が溶け込み、抗炎症作用をもたらすことが期待される。さらに、結合型酸素はグリア細胞および炎症性メディエータの活動抑制を介し、線維筋痛症の症状を緩和する可能性も指摘されている。そこでChen氏らは今回、線維筋痛症患者に対する高気圧酸素治療の有効性と安全性を評価するため、システマチックレビューおよびメタ解析を実施した。

疼痛や圧痛点の数、疲労感などが改善

　Chen氏らは、PubMed、EMBASE、Cochrane Library、Web of Science、VIP （China Science and Technology Journal Database）、CNKI （China National Knowledge Infrastructure）、 WanFang databaseから2022年10月22日までに登録された文献を検索。適格基準を満たした臨床試験9件〔ランダム化比較試験（RCT）3件、非ランダム化試験（NCT）6件〕・288例を解析に組み入れた。主要評価項目は疼痛、副次評価項目は圧痛点、疲労感、全般的な機能、患者満足度、睡眠障害、有害事象とした。

　解析の結果、対照介入と比べて高酸素治療は線維筋痛症患者の疼痛を軽減する可能性が示された（標準平均差－1.56、95％CI－2.18～－0.93、P＜0.001、I²＝51％）。また、ほとんどの試験において高気圧酸素治療は圧痛点の減少と疲労感の軽減、全般的な機能、患者満足度、睡眠障害の改善が示されていた。有害事象は解析対象の185例中44例（23.8％）に発現し、主なものは軽度の気圧外傷が30例、閉所恐怖症が7例、新規発症の近視が4例などだった。副作用が原因で中止した患者は12例（6.5％）だった。重篤な有害事象または合併症の報告はなかった。

　以上から、同氏らは「高気圧酸素治療は線維筋痛症患者の痛みや圧痛点、疲労感、全般的な機能、患者満足度、睡眠障害の改善において有益であることが示唆され、副作用は可逆的なものであった」と結論。ほとんどの副作用が2.0絶対気圧（ATA） 以上で発生していたとの報告や、線維筋痛症治療において1.45ATAで有害事象の発現なしに効果を示したとするRCTの報告などがあることから、「有害事象の発現を抑えるには2.0ATA未満の高気圧酸素治療が有用な可能性がある」との見解を示している。

　一方で同氏らは、今回の研究の限界として、解析に組み入れたRCTが3件のみと少なく、バイアスリスクが高い可能性があること、試験ごとに治療気圧や治療時間にばらつきがあり、試験間の異質性が高いことなどを挙げ、「今後、質の高い大規模なRCTを実施し、線維筋痛症に対する高気圧酸素治療の有効性と安全性についてさらに検証をする必要がある」と付言している。

（岬りり子）