家庭用心電計で心房細動再発を早期に検出
2023年03月03日 17:31
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心房細動(AF)に対するカテーテルアブレーション(以下、アブレーション)施行後の再発予防には、心電図のモニタリングが重要である。しかし、AF患者の約4割は自覚症状がないとされ、外来心電図検査のみでの発見は難しい。京都府立医科大学不整脈先進医療学講座講師の妹尾恵太郎氏らは、通常診療に加え家庭心電図測定を実施することで通常診療単独と比べ、アブレーション後のAF再発を頻回かつ早期に検出できたとInt J Cardiol Heart Vasc(2023; 44: 101177)に発表した。
デジタルツールの使用率は個人の意欲に依存
最近、さまざまな家庭用心電計が普及し、AF検出における有用性が実証されている。しかし、これらデジタルツールの使用率は個人の意欲に依存し、経時的に低下することが知られている。また、アブレーションを受けたAF患者の術後管理において、家庭用心電計の測定率やAF検出率に関する報告はなかった。そこで妹尾氏らは、通常診療への家庭用心電計の上乗せ効果を検討する前向き多施設観察研究を実施した。
対象は、2019年5月~20年12月に近畿地方の6施設でアブレーションを受けたAF患者128例のうち、同意撤回例、転院例などを除外した94例(平均年齢65.4±9.0歳、女性19.9%、高血圧55.3%、うっ血性心不全19.5%、糖尿病9.8%)。平均CHADS2スコアは1.1±1.0点、平均CHA2DS2-VAScスコアは1.91±1.3点だった。
全例が通常診療(3カ月間隔の外来受診による12誘導心電図と24時間ホルター心電図検査)に加え、オムロンヘルスケア社の心電計一体型家庭血圧計the Completeを用いて自宅で血圧および心電図を1日2回測定した。
週5日以上の測定で十分な上乗せ効果
中央値で12カ月(範囲7.1~12.3カ月)の追跡期間中にAFの再発が検出された患者は、通常診療時の18例に対し家庭心電図測定では31例と有意に多かった〔ハザード比(HR)1.95、95%CI 1.35~2.81、P<0.001、図1〕。AF検出までの平均期間は、家庭心電図測定で有意に短かった(153.1±76.7日 vs. 112.2±45.9日、P=0.04)。
図1. 家庭用心電計と通常診療によるAF再発検出率
次に、家庭心電図測定の遵守率で低遵守群(80%未満、43例)と高遵守群(80%以上、51例)に分けて検討した。その結果、通常診療単独に対するAF検出のHRは低遵守群で1.71(95%CI 0.92~3.18、P=0.09)、高遵守群で2.19(同1.43~3.36、P<0.001)と、高い遵守率による有意な上乗せ効果が示された(図2)。
図2. 遵守率別に見た家庭心電図測定の上乗せ効果
(図1、2とも京都府立医科大学プレスリリースより)
以上を踏まえ、妹尾氏は「アブレーションの術後管理に家庭用心電計も利用することで、通常診療単独よりも頻回かつ早期にAF再発例が検出できた。週に5日以上、家庭心電図を測定することで十分な上乗せ効果が期待できる」と結論している。
(小野寺尊允)