バイオインフォマティクスに基づく消化器疾患診療の展望 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする 統合プログラム5(ワークショップ) 11月4日(土) 9:00〜12:00 第6会場(ポートピアホテル南館 大輪田B) [司会] 田邉 稔氏 東京医歯大大学院・肝胆膵外科学 中川 英刀氏 理化学研究所生命医科学研究センター・がんゲノム研究チーム 若井 俊文氏 新潟大大学院・消化器・一般外科学 [演者] 田中 美帆氏 東京慈恵会医大・消化器・肝臓内科 西田 奈央氏 東京医歯大難治疾患研究所・ゲノム機能多様性分野 木村 岳史氏 信州大・消化器内科 谷峰 直樹氏 広島大大学院・消化器・移植外科学 望月 仁氏 山梨県立中央病院・ゲノム解析センター、山梨県立中央病院・消化器内科 北川 彰洋氏 堺市立総合医療センター・肝胆膵外科、九州大病院別府病院・外科 古橋 暁氏 浜松医大・2外科 岡田 泰行氏 徳島大病院・消化器内科 青木 修一氏 東北大大学院・消化器外科学 がん遺伝子パネル検査が保険適用となったことを受け、ゲノム医療のさらなる進展が求められている。その実現には、多種多様かつ膨大な生命情報の取得・集積および高度な情報処理技術が鍵となる。田邉氏は「本セッションでは、バイオインフォマティクスが消化器疾患診療の分野にもたらす最新の成果を提示していただく。将来の課題解決へとつながるモデルケースとして共有したい」と述べる。 膨大なヒトゲノムデータ解析結果により診断・治療の開発へ セッションの前半はがん以外の消化器疾患、後半は消化器がんにおけるバイオインフォマティクスについての最新知見がそれぞれ報告される。 炎症性腸疾患(IBD)の発症には腸管上皮細胞間透過性の亢進に伴う上皮バリア機能の破綻が関与するが、上皮恒常性の維持には腸内細菌の代謝産物が重要な役割を果たしている。田中美帆氏は、メタゲノム解析を用いたIBDの新規治療薬の探索結果について発表する。 Polygenic Risk Score(PRS)により、さまざまな多因子疾患の発症予測精度の向上が期待される。西田奈央氏は、肝疾患患者のゲノムワイド関連解析(GWAS)データを用いて慢性肝炎の発症や肝発がんを予測するPRSモデルを構築。その予測精度を報告する。 木村岳史氏は、慢性肝疾患の非侵襲的肝線維化マーカーとしてトロンボスポンジン(TSP)2の有効性を検討しており、本セッションでは非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)における有効性およびTSP2をコードするTHBS2遺伝子の発現メカニズムを解説する。 肝移植例に対する免疫抑制療法では、免疫応答とその反動としての感染症発症などの課題が残る。谷峰直樹氏は、候補遺伝子アプローチを用いて肝移植レシピエントの遺伝子多型プロファイルを解析、複数の遺伝子多型により免疫学的高リスク症例を抽出できた成果を報告する。 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の有効性予測因子の同定は、従来考えられていたほど容易でない。望月仁氏は、T cell recepter αchain(TCRA)遺伝子解析およびトランスクリプトーム解析により、各種免疫担当細胞・間質細胞の存在確率とICIの治療効果との関連を検討した結果を発表する。 近年のゲノム研究から、肝内胆管がんは症例間で多様性に富むことが判明。がん遺伝子パネル検査を用いたプレシジョン・メディシンが求められているが、治療に結び付くケースは必ずしも多くない。北川彰洋氏は、肝内胆管がんに対し根治切除を行った患者を対象に網羅的遺伝子変異解析を実施。症例間のゲノム多様性に関する特徴を明らかにする。 膵がん患者の5年生存率は8%程度と極めて不良で、ICIに不応な症例も少なくない。古橋暁氏は、いまだ不明な膵がんにおけるがん関連線維芽細胞(CAF)とICI耐性との関連について、RNAシークエンシングデータベースを用いた技術で膵がん組織部で発現が上昇して予後不良因子となる遺伝子群と予後の関係をスコア化。予後不良およびICI耐性の予測因子になりうることを報告する。 膵がんの局所再発はしばしば認められ、遠隔転移再発症例と同様に予後不良である。岡田泰行氏は、予後改善が期待される局所再発制御に関するmicroRNA(miRNA)パネルを開発。治療前に局所再発を予測することで、より強力な術前・術後化学療法が施行可能となる展望を示す。 切除可能膵がんの標準治療は術前化学療法だが、治療効果にはばらつきがあり予後を左右する。青木修一氏は、術前化学療法後の膵がん切除検体を用いた網羅的発現解析により治療耐性の機構を明らかにし、新たな治療戦略を提唱する。 田邉氏は「生命科学の分野において膨大な情報を情報工学の手法により分析するバイオインフォマティクスが拡大して久しい。この間、大規模解析プロジェクトの結果を統合・活用する基盤が構築され、がんゲノム分野では治療ターゲットとなる主要な遺伝子変異ががん体細胞変異カタログ(COSMIC)として公開され実臨床に生かされている。また、近年ではAIによる画像情報などの活用が進展しており、最近では"AIを用いた画像診断補助"が臨床適応されるなど期待の大きい分野となっている。一方で、消化器疾患診療分野には未解決の問題が数多く残されており、バイオインフォマティクスの発展を適切に臨床上の課題へとつなげることが必要である。本セッションではバイオインフォマティクスが消化器疾患診療の分野にもたらす最新の成果をご提示いただき、将来の課題解決へとつながるモデルケースとして共有したい」と呼びかけた。 Medical Tribuneウェブ JDDW2023 TOP 主なプログラム 第66回日本消化器病学会大会 [会長]坂本 直哉 北海道大学大学院 消化器内科学 第108回日本消化器内視鏡学会総会 [会長]矢作 直久 慶應義塾大学 腫瘍センター 第28回日本肝臓学会大会 [会長]四柳 宏 東京大学医科学研究所先端医療研究センター感染症分野 第22回日本消化器外科学会大会 [会長]堀口 明彦 藤田医科大学ばんたね病院 外科 第62回日本消化器がん検診学会大会 [会長]金岡 繁 浜松医療センター 消化器内科 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする ×
統合プログラム5(ワークショップ) 11月4日(土) 9:00〜12:00 第6会場(ポートピアホテル南館 大輪田B) [司会] 田邉 稔氏 東京医歯大大学院・肝胆膵外科学 中川 英刀氏 理化学研究所生命医科学研究センター・がんゲノム研究チーム 若井 俊文氏 新潟大大学院・消化器・一般外科学 [演者] 田中 美帆氏 東京慈恵会医大・消化器・肝臓内科 西田 奈央氏 東京医歯大難治疾患研究所・ゲノム機能多様性分野 木村 岳史氏 信州大・消化器内科 谷峰 直樹氏 広島大大学院・消化器・移植外科学 望月 仁氏 山梨県立中央病院・ゲノム解析センター、山梨県立中央病院・消化器内科 北川 彰洋氏 堺市立総合医療センター・肝胆膵外科、九州大病院別府病院・外科 古橋 暁氏 浜松医大・2外科 岡田 泰行氏 徳島大病院・消化器内科 青木 修一氏 東北大大学院・消化器外科学 がん遺伝子パネル検査が保険適用となったことを受け、ゲノム医療のさらなる進展が求められている。その実現には、多種多様かつ膨大な生命情報の取得・集積および高度な情報処理技術が鍵となる。田邉氏は「本セッションでは、バイオインフォマティクスが消化器疾患診療の分野にもたらす最新の成果を提示していただく。将来の課題解決へとつながるモデルケースとして共有したい」と述べる。 膨大なヒトゲノムデータ解析結果により診断・治療の開発へ セッションの前半はがん以外の消化器疾患、後半は消化器がんにおけるバイオインフォマティクスについての最新知見がそれぞれ報告される。 炎症性腸疾患(IBD)の発症には腸管上皮細胞間透過性の亢進に伴う上皮バリア機能の破綻が関与するが、上皮恒常性の維持には腸内細菌の代謝産物が重要な役割を果たしている。田中美帆氏は、メタゲノム解析を用いたIBDの新規治療薬の探索結果について発表する。 Polygenic Risk Score(PRS)により、さまざまな多因子疾患の発症予測精度の向上が期待される。西田奈央氏は、肝疾患患者のゲノムワイド関連解析(GWAS)データを用いて慢性肝炎の発症や肝発がんを予測するPRSモデルを構築。その予測精度を報告する。 木村岳史氏は、慢性肝疾患の非侵襲的肝線維化マーカーとしてトロンボスポンジン(TSP)2の有効性を検討しており、本セッションでは非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)における有効性およびTSP2をコードするTHBS2遺伝子の発現メカニズムを解説する。 肝移植例に対する免疫抑制療法では、免疫応答とその反動としての感染症発症などの課題が残る。谷峰直樹氏は、候補遺伝子アプローチを用いて肝移植レシピエントの遺伝子多型プロファイルを解析、複数の遺伝子多型により免疫学的高リスク症例を抽出できた成果を報告する。 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の有効性予測因子の同定は、従来考えられていたほど容易でない。望月仁氏は、T cell recepter αchain(TCRA)遺伝子解析およびトランスクリプトーム解析により、各種免疫担当細胞・間質細胞の存在確率とICIの治療効果との関連を検討した結果を発表する。 近年のゲノム研究から、肝内胆管がんは症例間で多様性に富むことが判明。がん遺伝子パネル検査を用いたプレシジョン・メディシンが求められているが、治療に結び付くケースは必ずしも多くない。北川彰洋氏は、肝内胆管がんに対し根治切除を行った患者を対象に網羅的遺伝子変異解析を実施。症例間のゲノム多様性に関する特徴を明らかにする。 膵がん患者の5年生存率は8%程度と極めて不良で、ICIに不応な症例も少なくない。古橋暁氏は、いまだ不明な膵がんにおけるがん関連線維芽細胞(CAF)とICI耐性との関連について、RNAシークエンシングデータベースを用いた技術で膵がん組織部で発現が上昇して予後不良因子となる遺伝子群と予後の関係をスコア化。予後不良およびICI耐性の予測因子になりうることを報告する。 膵がんの局所再発はしばしば認められ、遠隔転移再発症例と同様に予後不良である。岡田泰行氏は、予後改善が期待される局所再発制御に関するmicroRNA(miRNA)パネルを開発。治療前に局所再発を予測することで、より強力な術前・術後化学療法が施行可能となる展望を示す。 切除可能膵がんの標準治療は術前化学療法だが、治療効果にはばらつきがあり予後を左右する。青木修一氏は、術前化学療法後の膵がん切除検体を用いた網羅的発現解析により治療耐性の機構を明らかにし、新たな治療戦略を提唱する。 田邉氏は「生命科学の分野において膨大な情報を情報工学の手法により分析するバイオインフォマティクスが拡大して久しい。この間、大規模解析プロジェクトの結果を統合・活用する基盤が構築され、がんゲノム分野では治療ターゲットとなる主要な遺伝子変異ががん体細胞変異カタログ(COSMIC)として公開され実臨床に生かされている。また、近年ではAIによる画像情報などの活用が進展しており、最近では"AIを用いた画像診断補助"が臨床適応されるなど期待の大きい分野となっている。一方で、消化器疾患診療分野には未解決の問題が数多く残されており、バイオインフォマティクスの発展を適切に臨床上の課題へとつなげることが必要である。本セッションではバイオインフォマティクスが消化器疾患診療の分野にもたらす最新の成果をご提示いただき、将来の課題解決へとつながるモデルケースとして共有したい」と呼びかけた。 Medical Tribuneウェブ JDDW2023 TOP 主なプログラム 第66回日本消化器病学会大会 [会長]坂本 直哉 北海道大学大学院 消化器内科学 第108回日本消化器内視鏡学会総会 [会長]矢作 直久 慶應義塾大学 腫瘍センター 第28回日本肝臓学会大会 [会長]四柳 宏 東京大学医科学研究所先端医療研究センター感染症分野 第22回日本消化器外科学会大会 [会長]堀口 明彦 藤田医科大学ばんたね病院 外科 第62回日本消化器がん検診学会大会 [会長]金岡 繁 浜松医療センター 消化器内科