大腿動脈穿刺後の死亡が7例発生

後腹膜出血の発見遅れに警鐘

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 日本医療安全調査機構(医療事故調査・支援センター)は昨日(3月11日)、血管内治療時の大腿動脈穿刺に伴う後腹膜出血の発見の遅れによる死亡事例が7例発生していたとして、「医療事故の再発防止に向けた警鐘レポートNo.5」(以下、レポート)を発行した。これを受けて厚生労働省は同日付で、医政局地域医療計画課医療安全推進・医務指導室長通知(医政安発0311第6号)および医薬局医薬安全対策課長通知(医薬安発0311第1号)を発出し、関係団体に確認と周知を依頼した。(関連記事「気管切開チューブの逸脱・迷入による死亡が21例発生」)

高位穿刺が後腹膜出血を招く

 今回報告された7例中6例で高位穿刺(鼠径靱帯より頭側の動脈への穿刺)が疑われた。高位穿刺では血管周囲の支持結合組織が少なく、穿刺孔のすぐ下に硬い骨がないため、止血デバイスを使用した場合も含め圧迫による止血効果が得られにくい。また、出血が後腹膜腔に貯留しやすく体表から発見しにくいという特徴がある。

 公表された主な事例は以下の通り。

事例1

・90歳代。内頸動脈狭窄症で頸動脈ステント留置術を施行。抗血栓薬を3剤服用中。

・血管内治療時に大腿動脈を穿刺。治療後、止血デバイスおよび用手圧迫で止血。血圧が低下し、昇圧剤を投与。鎮静をかけたまま帰室。刺入部の腫脹、硬結なし。再度、血圧が低下し昇圧剤を増量。ヘモグロビンが低下し輸血を準備。帰室から約1時間半後、CTで大腿動脈穿刺部近傍に後腹膜血腫を確認した直後、心肺停止となり死亡

・解剖なし、死亡時画像診断(Ai)なし

事例2

・70歳代。下肢閉塞性動脈硬化症(膝窩動脈以下閉塞)で経皮的血管形成術を施行。抗血栓薬を2剤服用中。

・血管内治療時に大腿動脈を複数回穿刺。治療後、止血デバイスで止血。帰室後、穿刺した側の腹痛あり。約1時間後、刺入部の出血、腫脹なし。約3時間後、便失禁・嘔気・嘔吐あり。その後、背部痛・顔面蒼白・頻脈あり。血圧が低下し昇圧剤を投与したが、心停止。心拍再開後にCTで後腹膜血腫を確認し、帰室から約15時間後に死亡

・解剖あり、Aiなし

 その他の事例については公式サイト「対象事例の概要」を参照されたい。

血圧低下や腰背部痛が持続する場合はCT検査の検討を

 高位穿刺を回避するためには、鼠径靱帯(上前腸骨棘と恥骨結合の間)の視診・触診、大腿骨頭の位置のX線透視確認、血管の位置と深さの超音波確認が重要とされる。なおドレープをかけると穿刺位置の確認が困難になる場合があるため注意が必要だ。

 レポートでは対策として、刺入部に出血や腫脹が認められなくとも、血圧低下や腰背部痛などが持続する場合は後腹膜出血を疑い、CT検査を検討することを提案している()。

図.血管内治療時の大腿動脈穿刺に伴う後腹膜出血による死亡を回避するための対策

(「医療事故の再発防止に向けた警鐘レポートNo.5」より)

(編集部・小暮秀和)

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